「二人一組になってください」あらすじ、感想

本当の友達はいますか

木爾(きな)チレンさんの「二人一組になってください」。

学生時代に先生から何度も聞いたこの言葉が本のタイトルです。

女子高で卒業式の日に突然起きたデスゲーム。

友達の見えない悪意が表に出たら、あなたならどうしますか。

あらすじ

女子高の卒業式直前、担任教師による特別授業と題されたデスゲームが始まった。

「二人一組になってください」

いくつかのルールを守りながら、恐々と二人一組になり始めるクラスメイトたち。

二人一組になれなかった失格者は無残な死を遂げる。

画策しながら何度も「二人一組になってください」を繰り返し、余り、散っていく友達。

なぜこのデスゲームは始まったのか。

死を前に原因と、自分自身と向き合う生徒たちの行方は。

担任教師の思惑とは。

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感想

このデスゲームが始まった理由はいじめです。

暇を持て余すかのようにささいなきっかけで始まるいじめ。

地味で暗いとのけものにされるいじめ。

身体的苦痛を伴ういじめもあれば、いないことにされるいじめもあり、どちらも強烈な残酷さで人の心をえぐります。

思春期特有の意地悪さ。

女子グループ。スクールカースト。

嫌なことを思い出さずにはいられない物語ですが、それこそがこの作者の思惑ではないかと思います。

「みんな考えてみて。いじめられる絶望。二人一組になれないつらさを想像してみて」と。

いじめは直接的に危害を加える人がもちろん一番悪い。

きっかけを作りいじめるよう仕向ける人が最も悪い。

だけど、いじめに加担したわけではない、ただ見ていただけ。もしくはいじめだと認識していなかった、という無意識の悪や弱さもまた、向き合うことが必要な人の一人だと考えさせられます。

そんなことは他のドラマでも小説でも知っている。

何度も聞いたことがある。見ないフリも罪だと。

そうではない「何か」がこの本にはあると思います。

経験者でないと語れないような。

もっとリアルな心の仄暗い部分を色々な角度、立場から書かれているようでぞわぞわします。

誰もが人には見せないはずの悪の部分を覗き見てしまえる物語でしたが、本当の友情に感動する場面もありました。

この本が今現在つらい思いをしている人へ届けられたら。

明日からちょっと心の中で復讐して強くなるかもしれない。

読めば救われる人が確実にいるはず。

一人でも救える人がいるならこの本には大きな価値があると思います。

 

大人になると一人で行動することが当たり前になり、色々つらいことも経験して人に優しくなったりもしますが、それでもまだどこかには仄暗いものを抱えているような気がします。

 

最初は登場人物の名前が覚えられなかったり、若者言葉や思考回路にうなりたくなるときもあったけれど、結局続きが気になって一気に読んでしまいました。

面白かったです。

 

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