小説「雷神」 著者:道尾秀介
「雷神」 著者:道尾秀介 あらすじ・感想
いくつかの偶然が重なって起きた過去の事件や事故が、今新たな事件を生み出し、ひとつの家族を苦しめる。
雷が落ちるとき、それは偶然か。それとも何かの罰なのか。
著者の横尾秀介さんは1975年生まれ。東京都出身。
2004年にホラーサスペンス大賞特別賞を受賞してデビュー。
直木賞、本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞などを受賞しています。
<あらすじ>
15年前に起きた妻の事故死に関する秘密を抱えた藤原幸人(ふじわらゆきひと)は、父が始めた埼玉県の小料理屋を継ぎながら、一人娘の夕見(ゆみ)を育てていた。
夕見は現在大学生。
幸人には妻の死以外にも悲しい過去がある。
子供の頃に住んでいた新潟県の小さな村で母を亡くし、その翌年には父が村で起きたある事件の犯人と疑われ、さらに姉は雷に打たれ身体に一生残る傷跡を抱えた。
小さく閉鎖的な村社会。母の不審死。村の伝統祭「神鳴講」で起きた事件。父の不審な行動。雷に打たれた姉の悲しい人生。
家族で村を出てからも、目に見える傷を負った姉の不幸は続く。姉をより傷つけないよう、姉のつらい場面は見ぬふりをしてきた幸人。
事件について語らない家族。沈黙の時間。
あるきっかけから村に戻り、30年前の「神鳴講」で起きた事件について探る幸人と有見、姉の周りで新しい事件が始まる。
親と子、姉と弟、友達。互いを思い合うが故に、それぞれ深い傷や秘密を抱えながら自分を責めて生きてきた。
家族に待ち受けていた真実とは。
<感想>
小さな村の中でもし凄惨な事件が起きたら、その事件に関係した家族は何十年たっても人々の記憶から消えることはないのでしょう。
つらい思いを抱え、さらに追い打ちをかけるように周りから咎められ、傷は深くなるばかりです。
そこにどんな原因があったとしても、例え被害者であったとしても、集まった少ない情報により作られた不確かな憶測を信じられてしまう怖さがありました。
そういうことは小さな村じゃなくても、すぐ身近でも、自分にも起こり得ることだと思います。
人の歪んだ欲望、誰かを守るための小さな嘘や行動、沈黙、誤解、落雷。そのどれもが嫌な歯車をかみ合わせてしまい起きた不幸。
もしあのとき話し合っていたら、本当のことを伝えていたら、余計なことをしなかったら。
すべてが変わっていたでしょう。
そういうことが何度もいくつも繋がり起きてしまった事件は、後悔とともに悲しみが重くのしかかります。
伏線の回収が見事で、読み終わった後は「なるほどー」となりました。後半に小さな伏線の回収がしっかりされていてスッキリします。
ところが!終章が読み終わり、これで終わりと思いきや…その後の数ページにもある事実が隠されています。
最後の1ページ、最後の1行まで見逃せない1冊です。
<こんな人におすすめ>
- ミステリー小説が好きな人
- 予想できること、できないことの両方がある本を読みたい人
- 家族に問題を抱えたことがある人
- 伏線回収でスッキリしたい人