「プロジェクト・ヘイル・メアリー」あらすじ、感想

SF小説

アンディ・ウィアーの長編SF小説。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」上下巻。

SF小説を読むのはおそらく10年ぶり(最後に読んだのは「星を継ぐもの」)でしたが、失敗に折れず戦う男と壮大なスケール、化学の世界に引き込まれました。

物語は宇宙規模の壮大なスケールですが、主人公が戦う空間はほぼ宇宙船の中。

宇宙船という決して広くはない空間を使い、知能を駆使して地球という広い空間を救おうとする熱い男の物語です。

あらすじ

グレースは高度なコンピューターで制御された円形の奇妙な白い部屋で目覚めた。

体には管が繋がれており、長い睡眠状態にあって自分の記憶がだいぶ失われていることに気づく。

名前すら思い出せない。

同じ部屋には二人のミイラ化した遺体がある。生きているのは自分だけのようだ。

グレースは徐々に体を動かし部屋を探るうちに、地球ではない重力の場所にいることを知る。

彼が目覚めた場所は宇宙船、ヘイル・メアリー号。

断片的に記憶が戻るにつれ、自分が地球の全生命滅亡の危機を救うために宇宙へ送り込まれたこと、世界中の有能な科学者を集めて発動したプロジェクトの中枢にいたことを思い出した。

災害級に減少していく太陽エネルギーによって進む人類滅亡へのカウントダウン。

グレースは宇宙空間で出会った相棒と共に、謎の解明に挑む。

感想

SF小説はとにかく難しい、という固定観念を捨てられること間違いなしの1冊「プロジェクト・ヘイル・メアリー」。

もちろん、現実味を待たせるために必要な化学的知識はふんだんに出てくるけれど、それは小説を面白くするための材料にすぎません。

物語を動かすのは化学式でも数式でもなく、他者を思いやる気持ちや正義感。

本の始めは「私は誰、ここはどこ」状態がしばらく続きますが、記憶が失われていても知識は失われていないことに気づき、身近にある物を使って重力の計算をするあたりからもう、SF小説の面白さが始まっていました。

そして何よりも魅力的な、宇宙空間で出会った相棒の存在。

未知との遭遇です。

太陽エネルギーを回復させる方法を見つけるため、宇宙空間で手あたり次第に実験を繰り返すグレース。

失敗を繰り返しながらも、人々を救うという強い意志を常に持ち、何度も手を変え実験に挑みます。

そんな正義感の塊のようなグレースですが、地球にどうしても救いたい人がいるわけではない(独身で家族や友人関係も薄い)のに頑張るところが私はぐっときました。

今にたどり着くまでの人生はあまり人間関係が豊かでなさそうなグレースが、人々の、子供たちの未来のために、自分の命と引き換えに頑張っている。

そう思うとぐっとくるものがあります。

もちろん映画「アルマゲドン」のように、愛する誰かのために頑張るというのもすごく感動するけれど。

救いたい相手が特定の誰かではないところに人類愛を感じました。

グレースは究極のいい人なのですね。

 

上下巻あり最初は長いなーと思いましたが、下巻が特に面白く、先が気になりすらすら読めました。

SF小説がほぼ未知の領域である私でも読めるとは。

結末が読めそうで読めないところがにくい!

驚きだったけれど、個人的には好きなラストでした。

 

ライアン・ゴズリング主演で映画化もされる予定の「プロジェクト・ヘイル・メアリー」。

映画は2026年春公開予定のようなので、気になる方は先に読んでみるのもありだと思います。

 

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