小説「草原のサーカス」

小説「草原のサーカス」 著者:彩瀬まる

<あらすじ>

大学を出て製薬会社に勤めながら、医科大学で非常勤講師としても働くキャリアウーマンの姉と、独特な世界観の中で、自分の心の声に正直に生きるアクセサリー作家の妹

姉は几帳面で器用、人当たりも良く友達や恋人もいる。妹は余計な人づきあいを拒み、恋人を欲しがることもなくアクセサリーを作ることに情熱をかけていた。

性格も生き方も真逆な二人はどちらも徐々に仕事で成果を上げ、順風満帆な人生を歩んでいた。

二人は成功を収める途中、小さな違和感を感じつつもそのときの状況に合わせてベストだと判断した行動を取っていたが、少しずつ思わぬ方向へ傾き始めてしまう。

経済状況や感染症の影響を受け、世の中の状況が刻一刻と変化していく中、必死にもがく二人はどこで間違ったのか。いつ気づくべきだったのか。そのとき違う道を選択することは可能だったのか。

世間から非難された二人が苦悩の先に見えたものとは。

<感想>

同じサーカスを見ても、印象も覚えていることもまったく違う姉と妹。お互いの価値観は理解できない二人。

姉は周りに馴染まない妹を心配し、妹は姉を良くできた人だとは思っても、羨ましいとは思わない。

何もかもが真逆だけれど、いつでも自分の信じる道を一生懸命生きているところは共通する二人でした。

そんな真面目で善良な二人が徐々に足を踏み外していく様には心が痛みます。

どちらも誰かに迷惑をかけるつもりじゃなかった。むしろ周囲の期待に応えるために頑張っていたのに、思いとは反対に悪い方へと進みだしてしまうところは読んでいてつらくなります。

でもそこがこの本のゴールではありません。

世の中からはじき出された二人は仕事も人間関係も失って孤独になりますが、それでもまだわずかな光がありました。

まだ接点を持ってくれる人がいて、自分でやりたいことをもう一度見つけ出そうとする気持ちの美しさがありました。

 

テレビやニュースで知る情報の表面だけを見ている私には、考えさせられる本でした。

ニュースで悪者、非常識な人とされた人の中に、真実を歪められた人がいるかもしれないこと、事件には語られない背景があることを、頭の片隅に置いて情報を冷静に吸収していきたいと思いました。

 

<こんな人におすすめ>

  • 空気を読んで生きてきた人
  • 人を好きになり我を忘れ突っ走ったことがある人
  • 山あり谷ありの人生の先に希望を持ちたい人
  • 孤独から立ち直れない人

 

 

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