「アイネクライネナハトムジーク」感想
伊坂幸太郎のアイネクライネナハトムジーク
映画にもなった、伊坂幸太郎さんの連作短編集「アイネクライネナハトムジーク」。
最初の2編は、ミュージシャンの斎藤和義さんから「出会い」にあたる曲の歌詞を頼まれた伊坂さんが、作詞はできないけれど小説なら…と書いたものだそうです。
大ファンである斎藤和義さんのために伊坂さんが小説を書き、そして斎藤和義さんがその小説を歌詞に使い曲(ベリーベリーストロング~アイネクライネ~)を作るというミラクル!
夢の共同作業ですね。
そしてさらにこの2編を膨らませた物語を作り、出来上がったのが「アイネクライネナハトムジーク」。
伊坂さんにしては珍しく?恋愛要素の多い小説でした。
感想
連作短編集のためあらすじは割愛させていただき、今回は代わりに登場人物の紹介と感想を書きます。
登場人物は本当にそれぞれ魅力的でした!
完璧じゃないけれど、情けないところもあるけれど…でもいいところもあるじゃん!という人々がたくさん出てきます。
主な登場人物
妻に出ていかれた会社員と、なかなか恋ができない後輩。
なぜか、みんなの憧れ美人と結婚できた、自信満々な男。
なぜかお客さんの弟と電話をしている女性美容師。
路上で人から悩みを聞き、その人にピッタリの曲をパソコンから流す謎の男性(斎藤さん)。
優しいヘビー級ボクサー。
怖いおじさんと対峙する高校生男女、その父と先生。
学生時代のいじめっ子と再会したOL。
大体こんな感じです。
この人々の周りにいる友達や同僚、偶然出会う人々も、とても面白い!
難聴少年や、オンチすぎて先生に「歌唱コンクールは口パクで」と言われた男子高校生。
かつてのいじめっ子へ仕返しをさせたい、いじめられっ子の同僚の女の子とか、私は好きです。
元いじめられっ子が大人になり立場が逆転し、かつてのいじめっ子へ仕返しのチャンスが来たときどうするか…気になりませんか?
路上で曲を流す斎藤さんのところは、まさに斉藤和義さんを頭の中で思い描きながら読みました。
この中に気になる登場人物がいたら、読んでみるときっと楽しいと思います。
読んで後悔しないどころか、予想以上の面白い結末が待っているはず!
最後の章「ナハトムジーク」は全体の結末が詰まっています。かなりグッときました。
ちょっとした登場人物だと思われた人々が意外なところで出てきたり。それはもう「なるほどー!」の連続で読んでいるとニヤニヤが止まらない。
特にヘビー級ボクサーの試合シーンは感動しました。
なるほどー!と分かった瞬間、突然涙が…
伊坂幸太郎さんの本は、最後にちゃんとすべてのピースがはまるパズルのようです。
読み切ったら完成図が見られます。
これだから本を読むのはやめられない。そう思える、伊坂幸太郎さんの世界。
まるでドラえもんのようです。
思うようにいかないこともたくさんあるし、失敗も痛い思いもするけれど、最後にはそれなりの笑顔になれる結末が待っている。
そしてその後も、きっとこんな風に人生が続いていく予感がある。
なんか素敵じゃありませんか!?
この本を読んで「世の中は不器用な人であふれている。自分もその一人だ」と思いました。
それは悪くない。むしろなかなかいいかも。ちょっと楽しいかも。
本は難しそう、読んだら眠くなりそう、何を読んだらいいか分からない…という方がいたら、伊坂幸太郎さんの本、お勧めしたいです。
難しくない、面白すぎて眠くならない、どの本も面白い。それが伊坂幸太郎さんの本だと、私は思います。
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