「ありか」瀬尾まいこ あらすじ、感想

親子とは
本屋大賞や様々な文学賞を受賞されている瀬尾まいこさんの小説「ありか」。
「ありか」の主人公が感じる理不尽な辛さも人の優しさに気付いた瞬間も、自分がかつて体験したことと重なりどっぷりはまって読みました。
誰かのために頑張っている人へエールをくれる、優しい物語です。
あらすじ
シングルマザーの美空は工場で働きながら、保育園に通う一人娘のひかりを大切に育てている。
自身もシングルマザーの家庭で育った美空は、育てた見返りを要求し続ける母に悩まされていた。
自分のことしか考えない母は、娘の寝る時間もこちらの都合も気にせず夜でも朝でも電話や訪問をしようとする。
そして自分のしたい話や鬱憤をはらすと去る母。
美空はずっと母が苦手だった。可愛がってもらった記憶もない。でも育ててくれた恩は感じる。
元夫は結婚しても子供ができても独身と変わらない自由な生活を送る人だったが、元夫の弟である颯斗は毎週水曜日に来ては美空とひかりの世話を焼いてくれる。
颯斗には同性の恋人がいる。
美空は颯斗の事情に踏み込みはしないが、いつも助けてくれる颯斗のことを気にかける。
家族とは。
血の繋がりはなくとも、年齢も性別も環境も違う人々が優しさをおすそ分けする温かい物語。
感想
読み始めは美空の境遇があまりに不憫で辛くなりましたが、辛いだけじゃないなく、暮らしの中にある確かな幸せが出てくるにつれ、物語もどんどん面白くなっていきました。
周りに強くて優しい人がいる。
試練が重なるときでも、助けてくれる人がいればなんとか乗り越えられる。
その人が辛いときには自分が助けられるように、気づけるようにと願う主人公もまた、強くて優しい人です。
試練のさなかにも感じられる人の温かさに何度も胸が熱くなりました。
味方になってくれる人は優しさに見返りを求めないし、相手に気を遣わせないよう「勝手にやっています」という態度を貫いてくれる。
凛としたその振る舞いに、かっこいい姿に、読んでいる私までとても励まされました。
美空の助っ人は義弟の颯斗だけでなく、職場の人、保育園のママ友、さらに義理母までいます。
なんだ、こんなに味方がたくさんいるじゃないですか。
そして何より一番の見方は娘のひかりです。
最後のひかりの言葉ひとつひとつに涙しました。
この本を読んで、自分にも味方になってくれる人がいることを、小さい頃の息子の優しい言葉を思い出しました。
交友関係が広くなくても、ちゃんと心が通い合っている人が数人いたらラッキーじゃないですか。
何度も苦しみを連れてくる人もいれば、何度も幸せを連れてきてくれる人もいる。
前者の場合は会うことが億劫だし暗い気持ちになる。
後者の場合は会うことが楽しみだし明るい気持ちになる。
実はとても分かりやすいですよね。
会うたびに嫌な気持ちになる人と時を共有するなんてもったいないくらい、まだ楽しいことが待っているはず。
母からのメールや電話の着信に暗い顔をしてしまう美空を見て、母のことを「くそばばあ」と見抜く颯斗くんが痛快でした。
周りにそういってもらって初めて気づくことってあると思います。
客観的な目で見ないと気付けないおかしさや、違和感の正体。
シングルマザーとかジェンダーとか、そういう状況よりも重要なのは言うまでもなく性格(本性)や相性。
シンプルなことは考えすぎると視界が複雑になり見失ってしまうのかもしれません。
シングルマザーの心優しい人と、なんでも持っているけど自己中な人、どっちが友達になりたいですか。
と聞かれたら即答できるのですが。
思いやり、温かさ、優しさは、お金がかからず誰でも手に入れるチャンスがあるけれど、手に入れるのには苦労も我慢も必要で、その代わり何よりも最高の美徳ではないでしょうか。
子どもを産んだからって子どもが好きな人ばかりじゃないし、自分以上には子どもを愛せない人もいる。
子どもを産んでいなくても子どもが好きで可愛がれる人もいる。
子ども以外でもそう。いくらでも例えはあります。
色んな人がいるけれど、誰かのことを思いやって行動する人はとても素敵で魅力的。
魅力的な人が支え合う、素敵な物語でした。
面白かったです。
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価格:1980円 |
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