小説「舟を編む」あらすじ・感想
2012年の本屋大賞「舟を編む」
本屋大賞を受賞し、その後アニメや映画にもなった、三浦しをんさんの「舟を編む」。
1冊の辞書を作るまでにかかる大変な労力や長い年月を通し、生きる目標がある幸せに気づかされる感動の小説。
著者の三浦しをんさんは、1976年生まれ、東京都出身の小説家・随筆家。
20代で直木賞を受賞。その他数々の受賞歴あり。
<あらすじ>
玄武書房の営業部に勤めていた27歳の馬締光也(まじめみつや)は、定年間近で後継者を探していた辞書編集者の荒木に能力を認められて引き抜かれ、辞書編集部へ異動。
馬締が異動した先の編集部の面々はクセのある個性派揃いだったが、それぞれが持つ違う才能を活かしながら、「辞書、大渡海(だいとかい)を作る」という同じ目標を持ち情熱を注いでいく。
<感想>
本の始めの方で、辞書のことを「言葉の海を渡る舟」、辞書を作ることを「海を渡るにふさわしい舟を編む」と表現しているシーンがあり、とても印象的でした。
その表現が「大渡海」の名前の由来になっています。
そしてこの本のタイトルも「舟を編む」。
人が言葉の海で遭難しないよう、辞書という舟に乗り、光を集めて進めますように…
辞書「大渡海」にはそんな素敵な願いが込められていました。
辞書編集者たちはそれぞれに悩みを抱えています。
人と上手く関われないこと、老いていくこと、ひとつのことに夢中になれないこと。
他人に分かりやすい悩みもあれば、まったく分からない悩みもあります。
辞書を作る仕事を通して、そういう自分の問題と向き合いつつ成長していく姿に、自然に感動しました。
馬締くんと下宿先の大家のタケおばあさんとの交流が面白くて、そのページは読んでいるとほっこりします。
タケさんの孫の香具矢(かぐや)との恋も不器用でいいです。
年月が経ちお互いに仕事で忙しくなるけれど、尊敬と優しさを持つ二人の関係性が素敵でした。
最初は苦手だった同僚の西岡くんは、読み終わる頃にはすっかり好きになっていました。馬締くんの気持ちが自分に乗り移っていたようです。
松本先生と荒木さんのベテランコンビは、最初から最後まで、舟の骨組みを作る大切な役割でした。
こんな素敵な人生の先輩に出会いたい。
この本を読んで一番感じたことは、生きる目標が定まっている人は、いいことも悪いことも受け入れて乗り越える力があるんだな、ということです。
そしてそれはとても幸せなことだということ。
自分にはそんな目標があるだろうか…
見つけられるだろうか。
それは自分の気持ちと努力次第だと、この本が教えてくれました。
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