クジラアタマの王様(伊坂幸太郎)あらすじ、感想

絵のある小説

伊坂幸太郎さんの小説「クジラアタマの王様」。

タイトルをめくるとすぐに出てくる絵本のようなイラスト。

セリフのない漫画のようなイラストが、本文中にも2~4ページくらいの量で時々出てきます。

このイラストが文章で作り上げた頭の中のイメージをやんわりと補ってくれて、小説の内容がより面白くなったと思います。

読み始めると「そろそろあのイラスト出てこないかな」と楽しみになるくらい、好きになってしまいました。

描いた方は川口澄子さんです。

あらすじ

製菓会社広報部の岸は、ある日会社で起きたトラブルに巻き込まれてしまう。

そのトラブルに関連して知り合った都議会議員の池野内からとても不思議な話を聞かされる。

それは、身近に起こる出来事が夢に関連しているのでは…という突拍子もない仮説だった。

池野内は夢の中で岸ともう一人の仲間と一緒に戦っているというのだ。

しかもその戦いの結果が現実世界に影響を与えているようだと。

もう一人の仲間は人気ダンスグループの小沢ヒジリだという。

池野内に頼まれて岸はなんとか小沢に近づき知り合うことができた。

3人の生い立ち、今までで印象に残った出来事を聞いてみると、同じ火事に遭遇していたり、似たような体験があったり共通点が見つかって…

現実に起こるとんでもないトラブルと立ち向かう3人の運命は。

クジラアタマの王様 (新潮文庫) [ 伊坂 幸太郎 ]

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感想(6件)

感想

とにかく面白い。

続きが気になり日常生活がソワソワしてしまうので、あっという間に読んでしまいました。

仲間を集めて戦う物語が好きな人にはたまらない小説だと思います。

伊坂さんのいつもながらに見事な伏線回収は今回もバッチリスッキリです。

ラストシーンは「はい!これでおしまい!」みたいなばっさりしたものではなく、自然で(まだまだ人生は続くぞ…みたいな)いい余韻を残しています。

夢の中でも現実でも猛獣?と戦ったり、人間にも猛獣みたいな人がいたり。

脇役もキャラクターにかなりいい味があります。

「この人この後幸せになりますように!」とか「この人いい加減現実みますように」とか、読むほどに思い入れが強くなっていきました。

 

作中には新型鳥インフルエンザウイルスの流行が出てくるのですが、まるでコロナウイルスが流行した世の中のことを書いているよう。だけど小説が出た年月を調べてみたら2019年7月でした。

コロナウイルスの流行はその後の2019年12月からです。

伊坂さんが想像で書いた「新種のウイルスが流行したら人はこうなるだろう。こういうことが起こるであろう」が、実際に起きてしまうとは。

政府の対策、製薬会社のワクチンや薬の開発、マスコミの取材、人々の憶測、宇宙服のような防菌服、マスク生活。
伊坂さんの勘の良さと想像力の的確さに驚きました。

本の内容は夢と現実のつながりが軸になっていますが、読者は自分が本とつながっているのを感じられると思います。

人間味のある登場人物と可愛いイラストが引っ張っていってくれるので置いていかれません。

無理矢理のポジティブや突然変異の能力ではなく、優しいポジティブと仲間と勇気で困難と立ち向かう主人公たちの姿が最後まで魅力的でした。

妻とか子とか、家族もグッジョブです。

最後まで読むとタイトルの意味が分かります。

本を読んでいる間は日常にワクワクが約束されるでしょう(予言)。

面白かったです!

 

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