「失われた貌」櫻田智也 あらすじ、感想

硬派なミステリー小説
櫻田智也さんのミステリー小説「失われた貌(かお)」。
本格的。硬派なミステリー。
小さなエピソードも見逃せない魅力的な物語でした。
あらすじ
山奥で顔を潰された遺体が発見された。
指紋、掌紋、面相、歯型。
身元を特定できるものはほぼ消失している遺体。
週刊の地方紙に「不審者の目撃情報があるにもかかわらず警察の対応が不十分」と載った直後の事件だった。
そこへ、身元が分からない遺体が発見されたという報道を見て、ひとりの少年が警察へやってきた。
「死体はお父さんかもしれない」
しかし新たな殺人事件が起き、最初の遺体の身元が前科ありの悪徳探偵であることが判明。
少年の父親ではなかった。
失踪した父を探す少年。
殺人事件を追ううちに現れる複雑な過去のエピソードが、事件を思いがけない方向へと導く。
感想
なんてあらすじを書くのが難しい小説だろう。
ちょっとしたエピソードが大事なエピソードになっちゃうので、ネタバレにならないようにあらすじを書くのがとても難しい。
まるでバタフライエフェクトです。
こういうことがあったから、こういう思考になって、こういう行動をとってしまったんだな、とか。
最初はこんなありきたりな出来事がきっかけで、ここまで長い年月をかけて大きな事件になっちゃったのか、とか。
犯人だけではなくて、その周りにいた(いる)人物たちのちょっとした行動が大きなパズルの大事なピースになっていました。
人によって違うボーダーライン。
ここまでは許せるけど、これは許せない。
他人には分からない自分のボーダーラインを相手が超えたとき、何かが起きちゃうんだろうなと。
殺人事件まではいかなくても、日常的に決定的な「何か」を失うことにはなるのかも。
他人のボーダーラインに鈍感な人ほど自己中心的で、負の連鎖を巻き起こす台風の目になっている。
でも自分が台風の目であることは気づかない。
動き回れば回るほどに周りを不幸にする人、関わりたくないですが、残念ながら少し付き合うくらいじゃ見抜けないもどかしさ。
真面目に生きている人々にかわいそうな出来事がでてきますが、冷静沈着な刑事がちゃんとそれぞれを落ち着くべきところへ導こうとするところに希望が見えました。
サイドストーリーまで完璧。
その刑事のサイドストーリーまでも完璧。
冷静沈着な刑事はとても温かい刑事でもあります。
そういう小さなエピソードもぐっときました。
特に、過去にひと悶着あった同期の刑事。
素っ気なく見えるけれど思いやりのある奥さん。
少年とその友達。
その人々との会話のときに人間味が出ていてとても好きになりました。
最後の方で、ホロっと泣いちゃうくらい。
緻密なミステリーを読みたい方にお勧めしたい一冊です。
面白かったです!
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価格:1980円 |
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