小説「幸運は死者に味方する」スティーヴン・スポッツウッド

「幸運は死者に味方する」あらすじ・感想

アメリカの大手出版社が高額で版権を取得した、スティーヴン・スポッツウッドのデビュー作

ニューヨークの凄腕女性探偵と、元サーカス団員の若い助手が挑む、大邸宅の殺人事件。

母と娘ほど年の離れた女性コンビが、身体を張ってタフに事件を紐解いていく物語。

最後の最後まで楽しめます。伏線回収が面白い!

 

著者のスティーヴン・スポッツウッドは、作家デビューする前に、劇作家、ジャーナリスト、教育者として活躍していました。

特にジャーナリストとしては20年間を費やし、イラク戦争やアフガニスタン戦争の後遺症や苦悩について書いていました。

奥様は作家のジェシカ・スポッツウッドです。

 

<あらすじ>

1942年、ニューヨークのある夜。サーカス団員のウィロウジーン・パーカー(ウィル)は、アルバイト中に工事現場で事件に遭遇。そのとき事件を追ってやってきた女性探偵、リリアン・ペンテコスト(ミズ・P)に、資質を買われスカウトされる。

ウィルは、ミズ・Pの家で共に暮らしながら、探偵に必要な能力を身に着けるため勉強を始めた。

 

そして3年後の1945年。ミズ・Pとウィルは、大邸宅の女主人アビゲイル・コリンズ殺人事件の捜査依頼を受ける。

事件の依頼者は、被害者の子供たちである美貌のコリンズ兄妹と、最高経営責任者兼、遺産管理人のウォーレス

 

アビゲイルはハロウィンパーティの最中に行われた交霊会の後、殺害されているところを発見されていた。

交霊会では前年ピストル自殺をしたアビゲイルの夫、アリステア・コリンズの霊が呼び出されていたという。

交霊術を行ったのはスピリチュアルアドバイザーのアリエル

 

パーティの最中に書斎でおきた、密室殺人事件。

当日はたくさんの参加者がおり、さらに手掛かりなしの厳しい状況。

ミズ・Pは冷静に確実にじわじわと、ウィルはタフに熱く、お互いを支えあいながら難事件に挑む。

 

<感想>

時代は終戦前後。舞台はアメリカのニューヨーク。

現代ではないところが、より面白くさせていたような気がします。

 

優秀でいつも冷静、だけど心優しい女性名探偵と、若くてエネルギッシュで、正義感と人情を合わせ持った助手。

名探偵ミズ・Pは素敵なお姉さんで、助手のウィルは少年のようでかわいい、一生懸命な女の子、という印象。

このコンビがすごくいい。

お互いに完璧な人間ではないけれど、欠点はお互いが支えあいます。

そして支えることがお互いにとって苦痛でも面倒でもなく、むしろ欠点も含めて好きな様子が伝わり、読んでいて温かい気持ちになります。グッときます。

ミステリー小説なのに。

この二人が違う方向から事件に巻き込まれていく様子がハラハラしました。

自分なりに推理しながら読んだのですが、想像を上回る濃厚な人間模様があり、それは最後まで読まないと分かりませんでした。

 

たまに伏線回収しない小説やドラマがありますが、この本は大丈夫。

そのまま放置しても、なんとなくフェイドアウトしても文句ないストーリーなのに、ちゃんと最後の最後まで「なるほど!!」がありました。

この人はこうで、あの人はああで…という最後の発見が面白かったです。

 

この本の感想とは少し外れますが、戦争で勝った国、負けた国の生活の差がすごいなと、改めて感じました。

当たり前ですが。

アメリカは戦後すぐ、現代に近い生活ができていたことに、今更ながら衝撃でした。

日本は「火垂るの墓」や「はだしのゲン」のイメージなので。

 

それでも、さすがにアメリカだろうと時代的にないものはない。携帯電話、監視カメラ、パソコン、インターネットなど、近代の文明機器はありません。

それゆえ犯人には有利で、事件を追う探偵や警察には不利な様子。

何せ証拠集めといったら、アリバイと指紋採取。大変な時代ですね。

 

そして違うのは文明だけではありません。アメリカの世間の目も、今とはだいぶ違います。

表面上は穏やかな生活ができていますが、それはあくまで「当時の常識から外れていない人」の話。

そうではない人にとっては厳しい時代でした。

ネタバレになってしまうので細かく書けませんが、この当時に根強くあった「非常識」は、今では常識です。

今では受け入れられていることで、受け入れなければ逆に差別になり、暴動が起きたりすること。

どんな時代にもいろんな価値観や感覚を持った人はいたけれど、公にできるかできないかは時代次第という悲しさがありました。

 

ストーリーも登場人物すべてのキャラクターも本当に魅力的で、かつ当時のアメリカの様子も想像できるくらい上手く書かれています。日本人の私が読んでもリアルにワクワクできました。

微妙な人の裏の顔や、うさん臭さの書き方がすごい!と思いました。

第2弾が出るといいなー…待ち遠しい。

新しい、面白いハードボイルド小説を見つけました。

 

<こんな人におすすめ>

  • コナン・ドイルやレイモンド・チャンドラーが好きな人
  • 女性が活躍するハードボイルド小説が読みたい人
  • 新しい作家の本が読みたい人
  • 海外小説が好きな人、読んでみたい人

 

 

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