「幽霊たち」あらすじ、感想

ポール・オースターの「幽霊たち」

ポール・オースターの名を広めたニューヨーク三部作のひとつ「幽霊たち(GHOSTS)」。

登場人物、ストーリー、すべてが奇妙な小説。

ミステリー小説、探偵小説。どう呼べば適切か分からない。

奇妙で面白いポール・オースターの世界。

 

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あらすじ

1947年2月3日。舞台はニューヨーク。

私立探偵ブルーの元へ、奇妙な変装をしたホワイトという名の男が仕事の依頼にやってくるところからはじまる。

ホワイトの依頼した仕事の内容はブラックという名の男を見張ること。

そして報告書を週に一度、郵送すること。

ブルーは依頼通り、ホワイトが用意したブラックの真向いの部屋に移り住み、ブラックを見張り続けた。

それはとてつもなく単調な毎日だった。

予想できるようなことはいつまでたっても起こらない。

ただ毎日机に向かい何かを書き続けるブラックの様子に、ブルーは不安を覚えるようになる。

浮気調査でもなければ事件の匂いもしない。ただ地味な生活を送り続けるブラックを見張る意味とは何なのか。ホワイトの目的とは何か。

ブルーは不確かになっていく自分自身に焦りや疑いを感じはじめ、事態を進展させようと様々な方法でブラックに近づくが…

感想

過去に読んだ面白い本を読み返そうと思って、まず手に取ったのがこの「幽霊たち」でした。

普通の時代(パラレルワールドとかではない)、普通の街並み(どちらかというと都会)、普通の年齢(30歳くらい)という、普通の設定の中に複数の奇妙が混在している物語。

まず面白いのは登場人物の名前がすべて色(カラー)であること。

ブルー、ホワイト、ブラック、他にもブラウンなど脇役にも色の名前がついています。

主人公ブルーの職業が私立探偵であることは、まあ会社員よりは珍しいという程度だと思いますが、仕事の内容が奇妙です。

その仕事とは、特に何の面白味もない、見張る必要を感じない人物を長期間(エンドレスに)見張り続けるというもの。

週に一度、退屈な報告書を送るだけで報酬が支払われる。

何のために自分はこんなことをしているのだろう。

だれかが自分をはめようとしているのだろうか。依頼者ホワイトは何者なのか。ブラックとの関係は。

いくつもの疑問が様々な想像によって、次第に恐怖へと変わっていく様子が面白かったです。

 

登場人物の名前はカラフルなのに、主人公ブルーと見張られる男ブラックを取り巻く情景は、不思議なくらい無色に感じました。

音も色もない世界。

現実にある街の中で、特に変わったことは何も起きない日々。

退屈になりそうなくらい外的な変化が起きないことで、逆に頭の中では恐怖という変化を生み出していきます。

確信できるものがなくなっていく不思議。違和感。

存在も立場も揺らぎだす始末。

物語が淡々と静かに進む分、ラストの衝撃が大きかったです。

 

ポール・オースターの本はどれも、独特な世界が初めから出来上がっていて面白い。出だしからわくわくします。

そして読み進めていくにつれ、主人公の頭の中(心の中)の揺らぎにどっぷりはまります。

まるで自分がその主人公の価値観を最初から持っていたような奇妙な感覚。

村上春樹さんの小説と通ずるとこがあるような気がします。

「幽霊たち」も、孤独で独特で奇妙で、魅力的な小説でした。

再読でも新鮮なハラハラ。

面白かったです。

 

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