小説「魔女たちは眠りを守る」 著者:村山早紀

魔女たちは眠りを守る あらすじ・感想

ただ一口に「ファンタジー」という言葉だけでは終われない、大人のための童話。

人の人生は生まれる前から始まり、死んだ後も続いている。

長く生きる可愛らしい魔女が、人との交流を通し、そう教えてくれました。

 

著者の村山早紀さんは、1963年長崎県生まれ。

児童文学の作家さんでもあります。

 

<あらすじ>

桜が舞う春。黄昏時の港町に、長い赤毛の若い魔女が帰ってきた。

小柄な身体で古びたトランクと黒猫を連れて。

魔女の名前は七竈(ななかまど)・マリー・七瀬

七瀬は、銀髪の美しい魔女二コラが営むカフェバー「魔女の家」のビルで暮らしながら、いろんな者たちと交流していく。

生きた人、死んだ人や動物の魂、ときには人形にさえ、七瀬は優しく救いの手を差し伸べる。

 

<感想>

もしオズの魔法使いのように、この世に良い魔女と悪い魔女がいるとしたら、この本に出てくる魔女は良い方の魔女です。

人に気づかれないよう、世界中の人を災害や事故など苦しみの中からひそかに救うような、優しい魔女。

普通の人が災害や事故から人を救うのは難しいかもしれない。

けれど日常の些細な困難に遭遇したとき、もしかしたらこの本に出てくる魔女なような人たちに、知らず知らずのうちに自分も救われているのではないかと思いました。

そして恐れ多いけれど、自分が救えた人もいたらいいな、と。

 

この本は、人が持つ永遠の想いについて書かれています。

永遠」とセットになる言葉があるならそれは「」かなと思います。真逆の言葉だからこそ。

特にそのことを考えさせられ、涙を拭いながら読んだのが、第5話の「サンライズ・サンセット」でした。

 

人の人生にはいろんな種類の悲しみ、いたみがあり、最後には死があります。

もしかしたらそういうものが中心にあるのかもしれないけれど、その周りには優しい人の声や、四季折々の美しい景色、美味しい食べ物なんかがふわっと周りを包んでいるのかもしれない。

悲しい色が薄くなるように、自分でも気づかないところであたたかい色が包んでくれているのかも。

こういう優しい本を読むと、読書もそのあたたかい色のひとつだな、と思います。

もちろん著者の村山早紀さんと知り合いではありませんが、村山早紀さんの優しさが、本を通して読者である私に届いている。

まさにミラクルです。

 

 

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