小説「今昔百鬼拾遺 鬼」あらすじ・感想

京極夏彦の百鬼夜行シリーズ

京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ「今昔百鬼拾遺 鬼」。

夏といえばホラー。ホラーといえば幽霊。

もしも幽霊より怖いホラーがあるとしたら…

それは生きている人。

結局生きている人間が一番怖い。

京極夏彦さんの本は、どれを読んでもそう思います。

幽霊、妖怪、鬼、呪い、宗教など、様々なテーマの本があるけれど、どれを読んでも結局一番怖いのは、生きている人間

そしてこの「今昔百鬼拾遺 鬼」もやはりそう。

ミステリー小説の枠を超え、ホラーのようなゾクゾク、さらには純文学のような気高さも感じられる1冊。

人間の心の隅に宿る、静かに燃える鬼。この夏のホラーに「鬼」はいかがでしょうか。

 

京極夏彦さんは1963年、北海道生まれ。

直木賞、日本推理作家協会賞、泉鏡花文学賞…その他数々の賞を受賞。

公式サイトは「大極宮」。

 

<あらすじ>

時代は昭和。

駒澤野球場周辺で起きた連続通り魔事件は、「昭和の辻斬り事件」と呼ばれ7名の犠牲者を出した。

7名のうち4名は死亡、2名は重症、1名は軽傷。

凶器はすべて日本刀。

最後の犠牲者となった片倉ハル子(16歳)は亡くなる前に、友人へ自らの死を予見するような言葉を残していた。

「先祖代々、片倉家の女は斬り殺される定めにある」と。

その言葉通り亡くなってしまったハル子。

ハル子の友人の呉見由紀と、見由紀から相談を受けた記者の中禅寺敦子が事件の真相を探り出す。

凶器の刀に隠された秘密とは。片倉家の女の呪いとは。

そして真犯人は…

 

<感想>

京極夏彦さんの本の登場人物でお馴染み、中禅寺兄妹の、今回は妹の敦子のみの登場でした。

敦子は兄とは違う手段で解決へと向かいます。

鬼だの呪いだの、そういう因縁が形成される理由は意外なものでした。

どんな呪いも祟りも冷静に紐解いてみたら、案外そんなものかもしれない。

逆に言うと、冷静な目を失うほど、複雑に偶然が重なることがあるのかもしれません。

敦子の冷静な目と、「普通」に縛られない柔軟な考察が犯人へと導きます。

 

鬼の呪いの話しに出てくる涼さんは、新選組の副長、土方歳三とつながりがあります。

鬼の副長、土方歳三。

以前読んだ京極夏彦さんの「ヒトごろし」という、土方歳三の時代小説にも出てきた「お涼」の名前が再びこの本で登場し、さらにワクワクが増しました。

 

人は言葉に呪われ、言葉に救われる。

京極夏彦さんの本は、言葉が持つ力の大きさ、怖さが描かれています。

想像力が現実を超えるホラーを生むことも多々あると思います。

本も言葉の組み合わせですもんね。

生き方や命そのものを左右する力を持つ「言葉」こそ、ホラー(鬼)なのかもしれませんね…

言葉に怯え、言葉に興奮する面白さを味わえる、期待を裏切らない1冊でした。

 

 

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