ミステリ小説「ハリー・クバート事件」あらすじ・感想

映画のようなミステリ

ハリー・クバート事件」の舞台はアメリカ北東部のニューイングランド地方です。

著者はスイスの若い作家、ジョエル・ディケール

そのスイス人作家がフランス語で書き、フランスで大ヒットした後、世界32か国以上で翻訳出版されるほど人気となったミステリ小説。

「アカデミー・フランセーズ賞」「ゴンクール賞」を受賞しています。

 

著者のジョエル・ディケールさんは、1985年、ジュネーブ生まれ。

ジュネーブ大学で法律を学びその道で働いていたけれど、途中から非常勤に切り替えて作家活動をしていました。

舞台となったニューイングランド地方は、幼少期の夏を毎年過ごしていた土地だそうです。

 

<あらすじ>

1975年。アメリカのニューハンプシャー州にあるオーロラという海辺の小さい町で、15歳の少女、ノラ・ケラーガンが行方不明になった。

ノラが最後に目撃された場所は、森の中で一人暮らしをしている女性、デボラ・クーパーの自宅。

デボラは警察に「ノラが男に追われている」「家に逃げ込んできた」と2度通報した後、殺害された。

その後ノラは行方不明になったまま、月日が過ぎていった。

 

そして2008年。ノラの白骨死体が発見された。

発見された場所は有名な作家、ハリー・クバートの住む家の敷地。

ハリーはノラが行方不明になった当時34歳で、15歳のノラと秘密の恋人関係にあったことから容疑の目を向けられる。

当時大ヒットしたハリーの小説「悪の起源」は、ハリーとノラの愛を基に描いた小説だった。

 

ハリーによって人生を救われ作家になったマーカス・ゴールドマンは、恩師の無罪を信じて事件解明に乗り出した。

警察や町の人々、ノラやハリーと交流があった人々を調べていくうち、徐々に浮かび上がる新しい事実。周りの人の死。

真実を語っているのは誰か。

 

<感想>

オーロラという名の海や森に恵まれた美しい町と、そこに何気なく一見平和に息づく人々。

その舞台設定や人間関係が面白く、ハマる要素のひとつになりました。

アメリカのドラマ「デスパレートな妻たち」にハマった方は、好きかもしれません。

もっと一般的な人々が多く出てくるのでさらに感情移入しやすいと思います。

 

そして最大の魅力、ハマる要素になったのは、ハリーとマーカスの関係。

大学時代の恩師であるハリーに、いかにマーカスが救われたか。

「よくできる子」に見せかけるのが上手い自分の鎧を壊し、弱い本当の自分を取り戻して受け入れ立ち向かうことで、マーカスはその後の人生をより豊かなものに変えていきました。

そのことを感謝しつつ、師弟関係から親しい友人へと変わっていく様子に胸を打たれました。

 

ノラとハリーの大恋愛はこの物語の主軸として魅力的に描かれていました。

若すぎる、未成年のノラの年齢(15歳)が二人の関係の大きな障害になっていたこと。

二人はそのことで深い傷を負いながらも、お互いにこれは一生に一度の大恋愛であることを確信していたところが切なかったです。

 

この本には色々な人が登場します。

町の人、警察、大富豪、若いときにひどい暴行を受けて顔が歪んだ男、マーカスの母や仕事関連の人、ハリーの弁護士。

町の人にしろ、主人公の母にしろ、主婦のキャラクターがかなりぶっ飛んでいて面白かったです。笑えます。

想像力のたくましさ!

 

上下巻ある本なので、読み始めるまでちょっとどうしようか迷いましたが、読み始めたらあっという間。

サイドストーリーもすごく面白かったです。

あとがきに書いてある通り、エンタテイメント小説だと思います。

外国の人の名前は覚えずらい!という私でも、キャラクターの個性によりしっかり頭の中にインプットされるので大丈夫でした。

伏線回収もばっちり。

 

感動あり、笑いあり、怒りあり。いろんな要素が詰まっていてとても面白い本でした。

読んで良かったです。

 

 

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