小説「我らが少女A」高村薫 あらすじ・感想

ミステリー小説「我らが少女A」
合田雄一郎シリーズのミステリー。
老女殺人事件の関係者「少女A」をめぐる人々の思いが、12年を経て再び交差していく物語。
ミステリーと群像を合わせたような、読み応えのある1冊です。
著者の高村薫さんは、1953年、大阪生まれ。「マークスの山」で直木賞を受賞しています。
<あらすじ>
12年前のクリスマスの朝、野川公園で老女殺人事件が起きた。
被害者の老女は近所に住む元美術教師の節子。事件当時は絵画教室を開き、子供たちに自宅で絵を教えていた。
節子は早朝から野川公園で絵を描く習慣があり、そのとき被害にあってしまう。
事件は未解決のままときが過ぎた。
そして現在。
池袋のアパートで女性が交際相手に撲殺される事件が起きる。
被害者は女優志望の朱美。12年前の老女殺人事件の関係者である「少女A」だった。
少女Aは交際相手に12年前の事件について語り、当時の絵具を持っていることを明かしていた。
12年前に事件を捜査していた合田は、当時の関係者を訪ね、再び事件を洗い直し始める。
すると当時は気づかなかった人間関係や、知らなかった事実が浮かび上がってきた。
月日を経て曖昧になった関係者たちの記憶。
その中には、他人の記憶を通して思い出された大事な記憶があった。
それぞれが辿った記憶の中にあるかけらを拾い集めて出来上がった「少女A」の姿とは。
<感想>
前半は文体に慣れるまで少し時間がかかりました。
会話や段落が少なく、ひとつの文の中に様々な登場人物がでてきて場面が急に飛び、内容を把握することに精一杯。
それでも後半からはぐいぐい引き込まれていきました。
どの登場人物も、過去と現在の両方で影の部分が濃く、その胸の内の描写が生々しい。
誰もが持つ罪悪感や嫌悪感が、それぞれの登場人物ごとにリアルに描かれています。
そのおかげで、どの登場人物の目線にもなれるところが面白かったです。
被害者家族の気持ちは、生きていたときの被害者との関わりによって、悲しみも気持ちの行方もだいぶ変わるものだなと、改めて気づかされました。
12年前の「少女A」は飾り気のないボーイッシュな女の子だったけれど、その輝きに魅了された人がたくさんいたことが、時を経て分かります。
その魅力こそが色々巻き起こしてしまう原因にもなり、複雑な気持ちになりました。
この本は若者目線の描写(SNSやゲームなど)が多く、それらがかなり細かい内容で、とても60歳を過ぎた作家さんが書いたとは思えないほど。
よく入り込んで調べられたのだと思います。
そして大人世代の描写も、目の前で自分が見ているかのように想像できるほどリアルです。
第三者的な存在で、遠巻きに薄っすら関わっていただけの小野雄太が、物語の最初と最後に出てくるところがなかなかにくい。
一番どこにでもいそうな一般的な人物なので、客観的な目線を持つ読者側の存在として、敢えて最初と最後に登場させたのかな、と思いました。
登場人物それぞれが、自分で解決するしかない問題を抱えて生きていたり、または死んでいくことが、読んでいてこたえました。
最後まで展開がある1冊です。
<こんな人におすすめ>
- ただのミステリーに飽きた人
- 重厚なミステリーが好きな人
- 今問題を一人で抱えている人
- 群像劇が好きな人
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価格:1,980円 |
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