「神様が殺してくれる」あらすじ、感想

森博嗣のミステリー

シリーズ物ではない森博嗣さんのミステリー小説「神様が殺してくれる」。

タイトルがすごいです。何か惹かれるものを感じ、手に取りました。

内容はもっとすごかった。

ラブストーリーのようなミステリー。

いつもの森博嗣さんとは一味違います。

村上春樹やレイモンドチャンドラーの雰囲気を感じる小説でした。

あらすじ

パリでは女優が、ミラノではピアニストが絞殺された。

どちらの現場にもいた人物の名はリオン。

遺体発見時にリオンは両手を縛られていたため、容疑者ではなく重要参考人として扱われた。

異常に美しい青年リオン。リオンの周りで続く殺人事件。

リオンは容疑者を神様だという。神様の名はレナルド。

かつて大学の寮が同室であっただけのレナルドは、なぜリオンが自分の名を挙げたのか理解できず、事件の全容を調べ始めた。

フランクフルト、台北、東京と、事件を追いかけ舞台をうつしていく関係者たち。

リオンは今どこにいるのか。

容疑者の目的とは。

事件が核心に近づくにつれ、事件も自分へと近づいてくる。

レナルドが最後に知った真実とは。

感想

美しい大人のミステリー。

物語は静かに淡々と進むのですが、語られることのない情熱がそのエネルギー源であることを、読み終わった最後に知りました。

事件の手がかりはリオンの異常な美しさです。

事件後、逃げるリオン。追うレナルド。

複雑な真相に触れそうになるほど、自分に対して不安になるレナルド。

リオンはなぜ、ほとんど交流なく卒業後も会っていない自分のことを「神様」と呼ぶのか。

そして容疑者の名前に挙げたのか。ずっと分かりませんでした。

最後の最後にようやくその理由を知ったとき、もう知る意味はなくなっているという悲劇。

美しさとは、愛とは、嫉妬とは。

それらが見えない糸で繋がっていて、ある日心の琴線に触れたらどうなるのでしょう。

想像するって難しいですね。

 

レナルドは途中で教授から「事件が終わったらこのことを本にしよう」と提案されていましたが、その話が最後にとても良い余韻を残していました。

明かされた事実と、明らかではなく想像するしかないことの両方が、この物語の面白さだと思います。

 

読者が自分の中の色んな固定観念や常識を覆さないと、真相を突き止めることはもちろん、理解することも難しいかもしれません。

私は真相を突き止めることはできませんでしたが、起きたことを受け止められたようには思います。

 

森博嗣さんが書いた本であることを忘れてしまいそうなほど、今までのミステリーとは違う印象の本でした。

村上春樹さんの本のような。

はたまたレイモンドチャンドラーの探偵物語(マーロー)のような。

面白かったです。

 

教訓。

美しいことは罪ではないが、罪を呼ぶことはある。

 

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