「婚活マエストロ」あらすじ、感想
婚活エンターテイメント
「成瀬は天下を取りにいく」で本屋大賞を受賞した宮島三奈さんの「婚活マエストロ」。
婚活がこんな風に面白い読み物になるとは!
あっという間(2日間)に読み終わりました。
あらすじ
Webライターでなんとか生計を立てている猪名川健人、40歳独身。
ある日アパートの大家さんの紹介で、婚活事業を営む会社の紹介記事を書く仕事を引き受ける。
雑居ビルにある小さな事務所には、社長と女性社員が1名のみ。
さらに時代遅れのホームページ…
怪しさを感じつつも猪名川は社長に進められるがままに、取材を兼ねて婚活パーティーに参加することになった。
地味なセットと少人数の参加者。手作りの麦茶…
しかし司会者がマイクを握った瞬間、そこは華麗なる婚活会場に変わっていったのであった。
司会者の名前は鏡原奈緒子。
猪名川と同年齢に見える彼女は会社唯一の社員であり、伝説の司会者「婚活マエストロ」だった。
感想
面白い。なんでしょうこの感じは。大笑いじゃなくてずっとニヤニヤ読んじゃう感じ。
さくらももこさんのエッセイのような大笑いではなく、ずっとハハハと軽い笑いが続いていく感じ。
登場人物もその辺にいそうな人が出てくるのですが、なんだかちょっと面白い。
悪い人がほとんど出てこないし、どちらかというと不器用な可愛い人が出てくるので温かい気持ちで最後まで読めます。
のんびりした性格の主人公、猪名川くん(ケンティー)の正直な心の声も面白い。
社長がお辞儀したときの頭髪問題とか。
女性作家の本によく出てくる容姿端麗で芯が強くミステリアスなパーフェクトメンではなく、別にモテないけどいじめられもしない、大学も出てるし彼女がいたこともある、ほどよく人間味がある普通の人が主人公というところも魅力的でした。
あとは主人公の外見的な表現がないという珍しさ。
背が高いとか二重瞼とか、痩せているとかふくよかとか。髪が長いとか短いとか。
何もなし。新しい。逆に好感が持てました。
勝手に性格から容姿や声を想像しながら読むという楽しさも加わりました。
小説で婚活という設定も面白いですね。私は初めてです。
若い頃に見ていたテレビの婚活バラエティ(島や村で開くお見合いパーティーに女性が赴く番組、司会が磯野貴理子さんとか)を思い出しました。
そういうの見るの、好きだったなあと。
大人になったら参加してみたい!と思っちゃうくらい好きだったような。
興味深い設定で始まった物語に、さらに興味深い人物たちの登場。
これはもう面白い匂いがプンプンしてくるじゃあないですか。
主人公がWebライターというところや歳が近いところなど、共感するところがあってだいぶ応援しながら読んでいました。
婚活マエストロ(マエストロだけどなぜか女性)の凛としたたたずまいに、マイクから聞こえてくる美声。
婚活マエストロがもつ、誰と誰が惹かれ合うか分かるという優れた嗅覚。
読み終わる頃にはすっかりファンになっていました。
不器用で魅力的な人たちが交差し合う、可愛くて温かい物語。
日々に疲れた大人たちの心に優しく明るく届くはず。
普段本を読まない方にこそお勧めな1冊です。
漫画を読むようにサクサク読めること間違いなし。
この本を読んだら本好きになっちゃうかも!?
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