小説「ライオンの棲む街」

「ライオンの棲む街」 著者:東川篤哉

 

<あらすじ>

主人公、川島美伽(27)は東京でOLをしていましたが、仕事も恋もうまくいかず、地元である平塚(神奈川県平塚市)の実家に戻ってきました。

再就職先を考えていたある日、美伽の元へ旧友、生野エルザから仕事勧誘のファックスが届きます。

しかしそのファックスには仕事内容は書かれていません。

疑問に思ったものの「持つべきものは友!」と喜んで地図にあった建物に向かいました。

ところがたどり着いた建物「海猫ビルヂング」は廃墟寸前。

さらに扉の社名には「生野エルザ探偵事務所」とあります。

中に待ち受けていたのは高校時代「ライオン」と呼ばれていた生野エルザでした。

こうして口は悪いけれど人目を引く美女名探偵エルザと、地味(多分それなりに可愛い)だけれど気のいい美伽の名コンビが誕生しました。

探偵エルザと助手美伽は、コンビ結成直後から探偵依頼を受けるとともに、事件に深入りしていきます。

海辺の街平塚を舞台に、軽快、痛快、愉快な二人が大活躍する、一話完結全五話からなる物語です。

 

<感想>

依頼人が持ち込む摩訶不思議な事件自体も面白いですが、何と言っても探偵エルザと助手美伽の掛け合いが漫才のようで面白かったです。

時にはののしり合い、憎まれ口をたたきますが、絶大な信頼関係があるので安心して笑えます。

こんな友達関係いいなあ、と少しうらやましいくらいです。

二人以外の人とのやり取りもとても愉快でわくわくしました。

それはライオンの異名を持つ、エルザの貫いたキャラクターが魅力的に描かれているからだと思います。

相手が警察、イケメン、テキ屋のお兄さん、病気のおばあさんだろうと、一貫した態度と容赦ないため口でぐいぐい相手の懐に入っていきます。

それなのに読んでいて不快な気持ちにならず(楽しい気持ちになる)、むしろ口が悪いことも混みで魅力的なのです。

ただ口が悪いだけなら嫌なやつになってしまいますが、エルザは依頼人思いで正義感が強く、行動力や戦闘能力もあり、小さいことを見逃さずに推理できる優れた頭脳も持っています。

ライオンのような豪快な解決っぷりはとても痛快で、とにかく読んでいてスカッとしました。

エルザの引き立て役にいまいち納得がいかない美伽のキャラクターもまた、しっかり魅力的に描かれています。

エルザと同じくらい、行動力も正義感も持っているのに時々空回りするあたりが、物語を一層面白く引き立ててくれました。

平塚に実際あるさまざまな場所や、七夕祭りまで事件の舞台になっていて、地元の方ならより一層楽しめると思います。もちろん地元の方以外が読んでも楽しい小説です!

この本の著者である東川篤哉といえば「謎解きはディナーのあとで」が有名ですね。ドラマにもなりました。

「君に読ませたいミステリがあるんだ」という小説も面白かったです。

「ライオンの棲む街」は、何か楽しいことをしたいけれど外出するのはちょっとな、という時に読むと気分転換になる、わくわくできる小説です。

 

<こんな人におすすめ>

・本を読んでスカッとしたい人

・笑いたい人

・ミステリー小説が好きな人

・本で重要視するのは登場人物のキャラクター!という人

 

 

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