「ひまわり」あらすじ、感想
「ひまわり」著者:新川帆立
アメリカ生まれで東大卒の弁護士、新川帆立さんが書いた「ひまわり」は、弁護士を目指す女性を描いた小説です。
ただし、その女性は四肢麻痺で、24時間要介護。
進み続ける勇気が輝きを振りまく物語でした。
あらすじ
大学卒業後、総合商社で10年勤務していた33歳のひまりは、ある日交通事故にあい頸髄を損傷してしまう。
意識は元のまま。だけど体は動かない。
事故直後は座ることさえ厳しかったひまりだが、長く厳しいリハビリにより自分でできることは増えていった。
それでもやりがいのある仕事は失った。
前向きに進もうとするひまりだが、就職活動を希望する障害者に社会の向ける目は厳しいものだった。
前例がないことや要介護の状態であることなど、社会はひまりにできないことの、断るための理由を探す。
そんな時、お見舞いに来た幼馴染で検察官のレオから弁護士になるよう勧められる。
自分の特性や現在の状況を考えると弁護士は意外と向いているのかもしれない。
そして四肢麻痺のひまりは司法試験に挑戦することとなった。
目指せ、弁護士。
感想
ただ歩道に立っていただけなのにまさか車が突っ込んでくるなんて。
しかも事故を起こした車の運転手は運転中に発作を起こし病死している。
四肢麻痺になったのに怒りをぶつける人もいない。
家族にかかる介護の負担。
思うように動かない体。あるはずだった未来。
心が折れてしまいそうなことばかり…と思いきや、救いになる人たちがいることに気づき始めたひまり。
元同僚(後輩)、同じ障害者仲間、さらに幼馴染のレオやヘルパーのヒカル、司法試験を目指す仲間や先生の登場により、目の前が徐々に開けていきます。
もちろん努力を続けて諦めないひまり本人が一番大変です。辛いし頑張っている。だから輝きも大きい。
ひまりの真剣さが周囲の人や制度も変えていく様子が、読んでいてとても嬉しいシーンでした。
そうやって動いてくれる当事者がいないと進まないことって、他にもたくさんあるのだと思います。
強く賢い女性だから次々やってくる困難を乗り越えられる、と思って読んでいたのですが、最後の方になって「それはそうだけど、それが全部じゃない」と気づかされます。
誰でも立ち向かうことはできるし、命がある限り生きていく方法を探すんだ、と学ばされた気がします。
最後の方に感動があるのだろうなーと覚悟して読んでいましたが、自分が思っていた以上に感動しました。
最初チャラい感じだったヒカルが、最後は一番好きな登場人物になっていたかも。
そもそも四肢麻痺じゃなくても弁護士になるための勉強や試験がめちゃくちゃ大変。
なんとなく漠然と頭いいんだろうな、勉強量すごいんだろうな、六法全書読んでいるんだろうな。
くらいに思っていましたが、やっていることはその想像を遥かに上回っていました。
そんなにやっても受かるか分からない。先が見えない。
その困難を突破した人たちが弁護士になっているのですね。
今ではテレビドラマに出てくる弁護士(俳優)を見るだけでも尊敬してしまいます。
自分にできることの限界を感じたら、踏み出せない一歩があったら、お勧めしたい小説です。
もちろん私自身も例外ではない。進まなくては。進めるだろうか。
応援歌のような物語に勇気をもらいました。
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