「夏帆」村上春樹。あらすじと感想

「夏帆」
村上春樹さんの新作「夏帆」は、26歳の女性が主人公の物語です。
夏帆の、夏帆だけの、夏帆を取り巻く物語。
夏帆という女性の身に起きた特別な出来事を、少し語ってみようと思います。
先に一言だけ感想。
面白かったです。
あらすじ
絵本作家の夏帆は、26歳の誕生日を過ぎたある日、仕事の関係者から紹介された男と食事をすることになった。
レストランで向かいに座る、10歳ほど年上のスマートな男。
コース料理を最後まで味わい、そつなく過ごした食事の後で男は言った。
「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」
怒りよりもただ純粋に驚いた夏帆は、後日さらに驚くことになる。
あんなに失礼なことを言い放った男がまた会いたいといってきたのだ。
それから少しずつ、身の周りで奇妙な出来事が起こり始める。
現実の世界に潜む奇妙な生き物たちとの出会い。
夏帆の身に迫る危険を知らせてくれる、ありくい夫婦。
ありくい夫婦の天敵、ジャガー。
ジャガーと仲が良い、シロアリの女王。
与えられた試練に立ち向かう夏帆の物語。
感想
特別美人なわけでなはいけれど、今まで外見で嫌な思いをしたことがない。
26歳になるまで何人か男の人とつきあってきたし、コンプレックスなど外見の悩みも特にない。
そんな夏帆が男から言われた衝撃のひとこと「醜い」。
しかも1回だけじゃなく、言い方を変えて何度も言ってくるのです。
「顔立ちが気に入らない」「いちばん不美人」「不器量」。
こんな失礼な人います!?
いないから多分、怒りを通り越して衝撃を受けたのでしょうか。
しかも夏帆はちょっと好奇心をくすぐられてしまったようで、もう一度会ってしまいます。
そこで不細工と言われた人がどんな反応をするのか興味があったという男を前に、もう二度とこの男とは会うまいと今度こそ硬く心に誓います。
この男との出会いから、さらに奇妙はものたちと出会い始める夏帆。
その度に与えられる試練。
夏帆は絵本作家なので、自分が出会った生き物を絵本の物語に登場させていきます。
夏帆の物語と同時進行する、夏帆が作る絵本も現実とリンクしていてちょっと不思議で面白かったです。
絵本と違い、現実では善人と悪人を区別することが難しい。
善人の中にも多少の悪があったり、悪人の中に善があることもある。
読んでいてうんうんと唸る場面がありました。
親子でも他人でもそれは単純に判断できないのだなと。
今までの関わりの中では知りえなかったことがあったり。
分からないところにこそ新しい物語が生まれるとしたら、その未知の世界を覗いてみたくなりました。
「夏帆」は夏帆の物語ですが、誰にでもそれぞれその人だけの物語があるのだから、予想外の面白いことがこれからもあるはず。
未知との出会い、過去のしこりとの和解、そしてこれから生きている限り続く平凡な生活の勢いみたいなものが魅力的に描かれていました。
最初のページから最後のページまで、読みやすい文章ですらすら楽しく読めました。
村上春樹さんの本には熱狂的なファンがいたり、逆に強烈なアンチがいたり。
評価が分かれることが多いようですが、それも人気作家の宿命ですかね。
世の中に広まってたくさんの人が読めば意見が分かれるのは当然だし、むしろ健康的な感じがします。
まあそういうことは置いといて、あまり気にせず一人静かに読むと、スッと入ってくる不思議な世界が楽しめるのではと思います。
親戚のおじさんやお父さん、「とぎや」の主人など、中高年?の男性が面白かったです。
あと、ありくいの奥さんが可愛かった。
いい意味で力が入りすぎていない、まるで自然に発生した物語のようでした。
不思議なことだらけなのに、それが一番の不思議かも。
面白かったです。
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価格:2860円 |
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