森博嗣の、人生の教科書のようなエッセイ

「つんつんブラザーズ」感想

森博嗣さんのエッセイ「つんつんブラザーズ」。

「The cream of the notes」シリーズの第8弾です。

シリーズとはいえエッセイなので、第8弾だろうが第10弾だろうが特に気にすることなく初めての方でも楽しく読めます。

森博嗣さんの物事に対する率直な考えがたくさん詰まった1冊です。

大学で働きながら小説家になり、今では奥様と都会を離れて自然豊かな広い土地で、趣味(鉄道模型・ラジコンなど)を楽しみながら暮らしている作家さん。

暮らしぶりは穏やかですが、知性の塊のような方のためか、エッセイの内容は辛口(というか正しい、正直な)かもしれません。

例えばこんなタイトルのエッセイがあります。

  • 「群れる」という教えについて
  • 「誰か見て」「誰か教えて」と立ち止まって前進しない幼さ
  • 「もっと早く出会いたかった」と言う人は、自分の未来を変えられない

タイトルからして厳しそうですが、実際厳しいことも書いています。

受け取る側の今の状況や、どういう風に物事を解決してきたかによって、だいぶ印象が変わると思います。

「うんうん、その通り!素晴らしい!」

そう思った人は多分、出来事(良い悪いどちらも)を誰かのせいにせず自分で受け止め、冷静にその時のベストを考え行動してきた人なのではないでしょうか。

あとはこんな役に立ちそうなタイトルのも。

  • 相談に乗って解決するときと解決しないときの差は、どこにあるのか?
  • 手を差し伸べるとしたら、立ち止まっている人ではなく、歩きだしている人
  • 「自分」とはどういう意味なのか
  • 安全とは、危険の確率を下げること。ゼロにすることではない
  • 困ったときにどうするか、ではなく、困るまえにどうにかしないと駄目
  • 後ろはどこまでも見えているのに、前は霧に閉ざされている。それが人生

どうでしょう。

面白そうじゃないですか?

このタイトルの真意が知りたい。答えが知りたい。

そう思ってこの本を手に取り購入しました。

とても正直で率直。無駄がない人だけど、無駄を楽しむ人。森博嗣さんらしい本です。

もともと小説が好きで読んでいたのですが、もうほとんど読みつくしたようなので今回はエッセイを読んでみました。

なんだかグッドタイミングだったようです。

逐一「そうだよなあ」と思いながら、うなずきながら読みました。

たまに「何!?わわー!」というのもあり面白かったです。

変化の時期に読むと背中を押してもらえるかもしれません。

一言で言うなら「賢者の本」。人生の教科書かな?

独特な感性を持った、とことん人に媚びない人。孤高の人。一匹狼。

人は誰しも前と後ろがあり、表と裏があるはず。

森博嗣さんだって人なのだからそうなはず。

なのに、本当に立体の人なのだろうかというほど裏表を感じにくい。

球体のような人だと思います。

そんな森博嗣さんのエッセイですが、おちゃめな面や笑える話もたくさん書いてあるので、エッセイとして楽しく読むこともできます。

悩める人の、根本の考え方を覆すかもしれない、脳に直接響くエッセイ。

 

エッセイの最後に「連載 ピロチくんとオレ」という、吉本ばななさんのあとがきのような面白い文があります。

ピロチくん(森博嗣さん)とオレ(吉本ばななさん)のストーリーなのですが、読むと吉本ばななさんが発見した森博嗣さんを垣間見ることができます。

二人の素敵な関係が分かります。

こんな風に、人生変える人と出会うことは誰の身にも起こることではないかもしれない。

吉本ばななさんの響き方に、感受性に、じーんと目頭が熱くなりました。

 

最後の吉本ばななさんも含めて、面白い1冊でした!

 

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つんつんブラザーズ The cream of the notes 8 (講談社文庫) [ 森 博嗣 ]

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