「つくろうひと」村山早紀 あらすじ、感想

喪失感を癒す本
村山早紀さんの小説を読んで感じることは、優しい、温かい、ファンタジー、猫が好き。
「つくろうひと」を読んでより確信しました。
大切な人を失った喪失感や先の見えない悲しみ、日々の孤独、生きていく不安、死んでいく不安を癒す薬のような本だと思います。
読んだ人の心に効く薬。きっと優しく作用してくれるはずです。
あらすじ
父は亡くなり、母は遠くで暮らす女子高生の章(あきら)は、似たような境遇にある従妹の萌音と共に、書店を営む祖母の家に預けられている。
優しい祖母と、気の合う親友のような従妹の萌音との支え合う3人暮らしは、親がいない寂しさをさほど感じずにいられるくらい、それなりに楽しいものだった。
ある夏の暑い日。
章と萌音は子猫を助けようと追いかけて、廃墟になっている古い洋館の中へ忍び込む。
そこで章は子猫と萌音をかばって階段から落ちてしまう。
意識を失って病院のベッドで眠り続ける章は、生霊のように魂が体から離れて街の地下にある不思議な湖の世界へ辿り着く。
そこには幼いころから話に聞いていた永遠に生きる人魚がいた。
地下の湖には、この世で傷つき最後を迎えた人や動物、物などが辿り着く。
人魚はそのものたちの悲しみをつくろい、傷を癒し、次の場所へと見送る。
人魚だけがいつまでもその地下の湖に住み続けていることに孤独をみた章は、人魚の傍に寄り添い続けると誓ったが…
感想
幼い頃から両親と共に暮らせなくなった章が、持ち前の明るさや強さ、優しさで築いた温かな暮らし。
その暮らしさえも突然の事故で手放すことになり、普通なら落ち込んでふさぎ込むかもしれないところですが、章は萌音や祖母のことをずっと心配しています。
人魚も言っていましたが、章は本当に優しい。
優しくて人の痛みに敏感。なんとか手助けしたい性分。
自分のことを優先せず後回しにする性格こそが、この物語を生み出しているように思います。
章以外の登場人物も優しい。
萌音は章がいなくても強くなろうと努力し、祖母は書店を一生懸命守り続けていて、章が病院で寝たきりになっている間も章がいつ戻ってきてもいいように頑張っています。
優しい人たちが作り出す、安心して癒されながら読める物語でした。
地下に人魚が住む湖があったり、現実にはいる嫌な人が出てこないところがファンタジーかもしれませんが、戦争や事故など現実に起こりうる不幸が描かれています。
もしも傷ついた命が燃え尽きた後、辿り着く癒しの場所があると知ったら。
生きている人にとってもそこは癒しではないでしょうか。
失ってしまった大切なあの人が、そこへ辿り着き癒されていると知ったら。
この世に残された人の気持ちも癒されると思います。
「つくろう」ことで傷を癒してくれる人魚自身もまた、生い立ちで傷つき、今も傷ついて生きているのですが、無償の愛をもってつくろうことを続けています。
章と気が合ったのは二人が似ているからかもしれません。
優しさは形として目に見えないけれど、人の生を動かす力があると思いました。
優しさが起こす奇跡の物語。
何かに傷ついている人はもちろん、気力が弱っている人にも読んで欲しい1冊です。
心の処方箋のような優しい本でした。
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価格:1870円 |
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