「DTOPIA(デートピア)」あらすじ、感想

第172回芥川賞受賞作
今年(2025年)の芥川賞受賞作、安堂ホセさんの「DTOPIA(デートピア)」。
今私たちが目にする耳にする具体的な問題がこれでもかと盛り込まれた、淡々と熱く燃える小説でした。
恋愛リアリティーショー、というくらいの前情報で読み始めましたが、そんなことは途中すっかり忘れていました。
あらすじ
舞台はポリネシアのボラ・ボラ島。
そこに集められたのは様々な国から来た十人の男と一人の女。
ミスユニバースをめぐって競い合う恋愛リアリティーショーが今始まった。
自由奔放なミスユニバースに振り回される男たち。
脱退させられた男たちにより、ルールで加えられた新しい女たちの中に「モモ」はいた。
キースと呼ばれる日本人の男の古い友人であるモモ。
二人が共有する過去の出来事と、その後ボラ・ボラ島で再会するまでの物語。
感想
「DTOPIA」が芥川賞を受賞したときに紹介されて記憶に残っていたのが「恋愛リアリティーショー」という言葉でした。
バーチェラーが小説になったようなものなのかな?(観たことないけど)
だとしたら個人的にはあまり魅力的じゃない…興味がない小説かもしれない…と思って読み始めましたが、全然違いました。
恋愛リアリティーショーは主人公の二人、キースとモモが再会するためのただの舞台にすぎなかったようです。
多国籍な人々が集まっても不自然じゃなく、しかも皮肉めいた舞台としては恋愛リアリティーショーが最適だったのだと思います。
物語の中では様々な問題が広くさらわれていきます。
取り上げられるのは実際に起きている(起きていた)問題です。
イスラエルとガザの争い、過去の核実験、ジェンダー差別、人種差別、小児性愛者、裏社会のビジネス、暴力。
核実験については核に魅力を感じた人がいたことや、正当性を持たせるために作られた現地の子供たちの存在意義。
人種差別では白人優位の流れが作られていく様など。
広く浅くさらっているのではなく、それぞれの問題に洞察と見解があり、新しい目線で問題をみることができました。
点と点が繋がり線となる。
そういう風に問題同士もどこかで繋がっていることが想像できて自然にまとまっています。
物語は終始冷静な語り口で淡々と進みますが、なんだかとても熱い。
本のエネルギーの影響か、一気に(ほぼ2日で)読んでしまいました。
なぜだろう。
読んでいる最中にテスカトリポカを思い出しました。
どの時代にも(芥川龍之介の時代もそうであったように)問題がない時代はないですが、自分に直接関係がないことはなるべく無心で通ろうとするか、自分の目で見れるものは四方八方見てやろうと思うか。あるいはその中間か。
どれを選んでも少し感じる皮肉。
勝ち負けではなく。
立ち位置を選ぶのは自分の境遇や経験と、プラス何かがあるような気がします。
その何かとはなんだろう。
人がひとりひとり自分で磨いて色をつけた何か。
ネガティブとポジティブは簡単に覆る。しかも何度も。
それでも、そこにはいつも優しい寛容がありますように。
誰にでも。
納得の芥川賞受賞作でした。
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価格:1760円 |
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