小説「女優の娘」著者:吉川トリコ あらすじ・感想

「女優の娘」著者:吉川トリコ

女の子が「女」という性ゆえに傷つけられることがないように。

不条理なことと戦う人にエールを贈る物語。

 

著者の吉川トリコさんは、1977年、静岡県生まれ。「ねむりひめ」で女による女のためのR-18文学賞大賞・読者賞を受賞。

著書に「マリー・アントワネットの日記」や、映画化された「グッモーエビアン!」があります。

 

<あらすじ>

アイドルグループ「YO!YO!ファーム」の斉藤いとは24歳。投票のランキングでは20位前後を行ったり来たり。

アイドルとしての潮時を感じながらも無我夢中で踊っていた。

そんないとのもとに、母親であるポルノ女優、赤井霧子の訃報が届く。

母親がかつて一世風靡したポルノ女優であることを隠してアイドル活動をしていたが、その死により娘であることが世間に知られてしまった。

時の人となったいとに、著名な映画監督、小向井祐介から赤井霧子の半生を追うドキュメンタリー映画の案内人を頼まれる。

監督はいとに容赦なくカメラを向け続ける。

ポルノ女優として生きた母親の人生とはどんなものだったのか。

ドキュメンタリー映画に出演する関係者たちのインタビューを通して見えてきたこととは。

アイドルがアイドルでいるために背負った十字架と、その後に続くそれぞれの人生とは。

 

<感想>

自由奔放で人を魅了するポルノ女優の母親と、地味でブスだと自虐的に生きるアイドルの娘。

正反対のような二人の間には反発する力と惹かれ合う力が大きくあり、親子という事実が苦しめることもありました。

離れた時期もあり、楽しく共に暮らした時間もある。

とても当たり前の親子ではないけれど、確かに二人は親子でした。

 

母親はシングルマザーで出産し、父親は不明。さらに職業はポルノ女優。

なかなか強烈な環境で育ったいとですが、本当に強烈なのはそこではありません。

成長過程にもっと強烈な出来事がありました。

 

母が死ぬといとは天涯孤独になってしまったけれど、アイドル仲間と支え合う姿には、友情を超えた特別な絆を感じました。

そしてそこがこの本の救いでもありました。

アイドルも酒を飲み性欲に生き、お金を節約したり人生に悩みながら年を取る。そんな普通に考えれば当たり前のことが、表向きにはしずらい職業であることの問題も描かれています。

 

ドキュメンタリー映画のラストシーンが良かったです。

母親の死の真相が垣間見える死直前の行動に、作者の優しさを感じました。

 

<こんな人におすすめ>

  • 世の中の不条理と戦っている人
  • すべての女性
  • アイドルファン

 

 

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