伊坂幸太郎の「ガソリン生活」あらすじ・感想
愛すべき車たち
伊坂幸太郎さんの長編ミステリー「ガソリン生活」。
この本では車たちにも感情があり、おしゃべりを楽しみます。事件だって推理しちゃう。
人間が知らないだけで。
あらすじ
ある日突然、大学生の兄と小学生の弟がドライブ中に、有名な女優が車に乗り込んできた。
女優は追っ手(記者)から逃げているとのこと。
美しく育ちの良い女優は今、不倫疑惑で世間を騒がせている最中だった。
正直でチャーミングな性格の女優を助けるべく、兄弟は女優が逃げられる場所まで乗せたが、翌日女優死亡のニュースが流れ…
思いがけず事件に巻き込まれていく兄と弟。
さらに別のトラブルを抱えた高校生の姉と、未亡人の母まで巻き込まれていく。
人の好い家族が様々な悪と戦う痛快ミステリー。
感想
女優死亡の交通事故。それを追う謎の記者。巻き込まれる兄弟。
それだけでも物語は出来上がっているのに、さらに小学生の弟が巻き込まれる巧妙ないじめ問題があったり、高校生の姉が巻き込まれる恐喝事件があったり。
もちろんそこは伊坂幸太郎さんなので、絶妙につながっていたり、つなげたり。
とても面白いストーリーになっていました。
父を早くに亡くした家族(母、兄、姉、弟)の、思いのほか!?強い絆が読んでいて明るい気持ちになりました。ガッツポーズをしたくなる場面も多数あります。
考えが柔軟で愛のある強い母、お人好しそうな兄、正義感が強く勇気のある姉、小学生なのに芯が強く誰よりも賢い弟。この弟が最高です!
近所の人までクセが強く、でも不思議と魅力的。
そしてなんといっても素晴らしいのが家族の愛車、緑デミ(緑色のデミオ)!
人間たちには聞こえないけれど、車同士、かなりおしゃべりしています。
例えば自宅で隣の家の車と。よく来る宅配便のトラックと。どこかの駐車場で初対面の車と。
さらには通りすがりの警察車両や、踏切の先頭では貨物列車ともおしゃべりします。
車同士のジンクスがあったり、新車やハイブリットカー、外車への思いがあったり。
とにかく色んなことを考えています。
車は自分の持ち主のことが好きで、性格も似てくるところなど、とにかく可愛い。
まるでペットのような愛すべき車たちも、事件を推理したりします。
人間以上に詳しく知っていることも。
読んだ後は自分の車が愛おしくなるはず。
すごく嫌な人間の闇の部分が事件の引き金になるけれど、善良でちょっとのんきな普通の人が乗り越えていくところがやっぱり面白い、伊坂幸太郎さんのミステリーでした。
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