ミステリー小説「invert 城塚翡翠倒叙集」著者:相沢沙呼 あらすじ、感想

ミステリランキング5冠「medium」の続編「invert」

ミステリランキング5冠(本格ミステリ大賞、このミス、本ミス、ベストブック、SRの会ベスト)を獲得した「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編、「invert 城塚翡翠倒叙集」。

著者の相沢沙呼さんは、1983年埼玉県生まれ。2009年に「午前零時のサンドリヨン」で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。「小説の神様」は実写映画化されました。

<あらすじ>

緻密な計画的殺人事件を起こした犯人の元に、霊能力があるという美女「城塚翡翠」が現れる。

事故や自殺を装った事件の犯人に近づき、あの手この手でほころびを引き出そうとする翡翠。

やわらかい雰囲気の翡翠が時折放つ鋭い言葉に、内心動揺しつつもポーカーフェイスを貫く犯人。

「多少トラブルはあったけれど大丈夫、ミスは何もないはず」と。

犯行を示すほころびは見つかるのか。作られた事故や自殺が暴かれるために必要な証拠とは?

 

事件を起こすのは、「ITエンジニア」「小学校教師」「犯罪界のナポレオン(探偵)」。

それぞれの犯罪者が起こした3つの事件からなる短編集。

 

<感想>

「medium」を読んだ方にとって待望の続編なのではないでしょうか。

私は「medium」を読まずに今作のみ読みました。相沢沙呼さんの本も初めてです。

普段は読まないジャンル(ライトノベル?)でしたが、抵抗なくサクサク読めました。

純文学や重い犯罪小説が苦手な方、普段は漫画派の方にも読みやすい本だと思います。

霊能力なんて怪しい…という方、霊能力の話しなんてほとんど出てこないので安心してください。

ちゃんと物証やアリバイ、目に見える証拠となる事実からひも解く正統派の推理小説です。

 

「invert」は犯人目線で描かれた3つの短編ミステリー。

自分の犯罪を正当化したい犯人にとって、本当の正義に追い詰められることは恐怖以外の何物でもないでしょう。

どんな理由があるにせよ、人を殺していい理由などないことを犯人自身が心のどこかで分かっているからこそ、やってくる怯え。

そんな心のすみをつつく、翡翠のするどい指摘が犯人を追い詰めていくところが面白かったです。

読み手は最初から犯人がわかっており、それをどうやって解決していくかが見どころ。

計画的犯罪が崩れる材料を探していく面白さがあります。

そのため犯人側の目線と、翡翠側の目線の両方が楽しめました。

翡翠の話し言葉や仕草が最初苦手で(ごめんないさい)若干引き気味で読み始めましたが、それも犯人を苛立たせるテクニックと分かってからは、違和感なく楽しく読めるようになりました。

翡翠が相棒の真(まこと)に言うセリフに「推理小説は驚かせることが目的になってきている。意外な犯人、意外な結末。推理小説は推理をする小説なのにびっくり小説が求められている。考えることを放棄しないでください。」という感じのセリフ(本当はもっと長いセリフですが割愛)があります。

この箇所に作者の推理小説への思いを感じました。一番好きなシーンです。

<こんな人におすすめ>

  • 推理小説が好きな人
  • ライトノベルを読む人
  • 普段は漫画派だけど、本も読みたいと思っている人
  • 際立つキャラが主人公の本が好きな人

 

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