小説「わたしの美しい庭」著者:凪良ゆう あらすじ・感想 

「わたしの美しい庭」

周りの常識はわたしの常識ではない。そう感じたことがある人や、世間の評価の中で生きづらい思いをしている人の心に優しさを届ける、そんな本です。

著者の凪良ゆうさんは2006年に「恋するエゴイスト」でデビュー。2020年「流浪の月」本屋大賞受賞。

<あらすじ>

マンションの屋上庭園にある、悪癖や悪いご縁を断ち切ってくれる「縁切り神社」。

緑あふれる庭園の縁切り神社は憩いの場にもなっており、マンション以外の人でも出入りは自由。それぞれ悩みを抱えた人が何かの縁を切りにやってくる。

その神社を管理している統理は、幼いころに事故で両親を亡くした小学生の百音を一人で育てている。

二人と同じマンションに住む友達の路有と桃子も、それぞれの生きづらさを抱えていた。

誰の目線にも寄り添う、優しさをつなぐ物語。

<感想>

両親を亡くした百音。血のつながらない百音を育てる統理。結婚適齢期で周りから圧を受ける桃子。セクシャリティに悩む路有。ハードな仕事で鬱になった基。

それぞれの悩みは簡単で速攻効果のある解決方法などなく、どこにも出口はない。このままこうやって生きていくしかない。なぜならそれが自分にとって一番心地よいから。別に解決したいとも、出口を見つけたいとも、周りと同じように生きたいとも思っていないのです。

このままこうやって生きていきたいと願うことは誰にも迷惑をかけていないのに、なぜか心に暗い負担がかかる。

この感じ、なんだかわかる気がします。

 

寛容さに欠ける世間の声は、彼ら、彼女らをときに苦しめますが、お互いを支えながら優しく生きる姿は本当に美しいと思いました。

世間の当たり前ほど厄介なものはないと思います。大きなお世話とはよく言ったものです。

世間の心地よさは誰もが同じではない、そんなこと本当は皆分かっているはずなのに、トゲを持つ言葉は「心配」という仮面をかぶってやってくる。

偽物の心配の正体は「好奇の目」ではないでしょうか。

つらいことが何もない人生なんてあるわけがない。なら人が苦しいことも想像できるはず。

統理が高校生のころ、路有を傷つけた友人に放ったセリフ「良心の呵責はおまえらの荷物だよ。人を傷つけるなら、それくらいは自分で持て」がグッときました。

とにかく統理がかっこいい。優しくて厳しい正義感を持って、真面目に生きている姿がかっこよかったです。

それぞれが皆、悩みを抱えているだけではなく、楽しんでいたり、こだわりがあったり、魅力的な人物に描かれているところが好きです。

続編があったらいいのにと思う、面白い本でした。

<こんな人におすすめ>

  • 息苦しさから救われたい人
  • 感動したい人
  • 優しい本が読みたい人
  • つらいことを受け入れながら生きると決めた人

 

 

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