「アルジャーノンに花束を」あらすじ、感想

ダニエル・キイスの不朽の名作

ダニエル・キイスの不朽の名作「アルジャーノンに花束を」。

TikTokやYouTubeでけんごさんという方が紹介し、若者たちの間で人気が広がり再び話題を呼んでいるそうです。

それで中学生の息子が去年購入した「アルジャーノンに花束を」を、20年以上の時を経て再読してみました。

あらすじ(未読の方注意)

知的障害をもつ32歳のチャーリー。

幼児程度の知能でありながらもパン屋の下働きとして真面目に働き、明るく前向きに暮らすチャーリーの元に、ある日夢のような話が舞い込んできた。

頭が良くなる手術があるという。

知能向上への意欲や希望、知能テストの結果、家族の同意などにより選ばれたチャーリー。

だがその手術に成功したのはアルジャーノンというネズミのみで、人間ではまだ試していない。

「みんなみたいに利口になりたい。みんなの会話に入ってみたい。字の読み書きがしたい。勉強がしたい」

学ぶことへの憧れを強く持つチャーリーは未知の手術の最初の一人となった。

 

手術は成功し、徐々に効果は表れ始める。

いつしか自分が尊敬していた大学教授たちをしのぐほどの成長を遂げていた。

チャーリーはたった数か月で人並み以上の知能を手に入れたのだった。

いつの間にか天才と呼ばれた。

恋も知った。

だけど以前より孤独だった。

 

頭が良くなればみんなの仲間に入れる。友達がいっぱいできると信じていたチャーリーに待ち受けていた現実とは。

友達だと思っていた人々が自分にしていたこと。

家族との辛い思い出。

知能の向上に対し追い付かない情緒に悩まされるチャーリー。

以前とは比べ物にならない知能を手に入れたが、以前持っていた明るさや純粋さ、人としての輝きは失われていった。

次第に周りとの関係は深刻なものとなり、さらにアルジャーノンには良くない変化が見え始め…

 

試練に抗いながらも懸命に生きた、アルジャーノンとチャーリーの物語。

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感想

物語はチャーリーが自分のことを自分で書き記す「経過報告書」で進みます。

そのため最初は誤字脱字やひらがなが多く、句読点は少なくとても読みづらいのですが、手術を受けた後は使う言葉が複雑で洗練されたものとなっていきます。

成長過程を表現するには本人が書く経過報告書という形が分かりやすくてベストだったと思います。

手術前はとにかくチャーリーの一生懸命な姿が胸を打ちます。

明るく純粋で前向き、人に対し敵意がなく希望に満ちている。

ところが手術をしたことで今まで尊敬していた人々が実は自分を馬鹿にしていたことを知っていまい、さらには尊敬していた教授さえもそれほどの人間ではなかったと衝撃を受け…

その辺りからだいぶ切なくなってきました。

知能が教授を上回ったことで自分の手術についても疑問が生まれ、その質問をぶつけても解答が得られず不安になり。

知的障害の子を持つ親や兄弟の辛さ、本人の辛さも知ってしまい、過去の辛い思い出が苦しめるようになります。

さらに手術をしたことで今の自分と昔の自分、手術前のチャーリーの視点が常に付きまとうようになり苦しみが増します。

頭が良くなっても恋をしても、昔のチャーリーが今の自分をじっと見ているという恐怖。

チャーリーの不穏な変化を心配してくれる人にも敵意を持ったり、真の愛情に気づいて傷ついたり。

たくさん学び苦しんだチャーリーの懸命に生きる姿や最後の選択まで、とても心を打たれました。

 

自分みたいな人のためになれば。

今後生まれてくるであろうチャーリーのような人のためになれば。

チャーリーは自分の経過報告書を辛くても記すことを止めなかったのは、チャーリー自身が持つ輝きが失われていなかった証拠だと思います。

例え周りを言い負かして怯えさせ嫌われたとしても。

暴言を吐きながらも書き続けた報告書は他の誰かのためで。

恥ずかしい内容も含め誠実に書いたこの報告書が、いつか誰かの役に立つと信じていたチャーリーを、誰が笑うことができるでしょうか。

 

物語はもちろんですが、あとがきもとても感動しました。

翻訳をした小尾芙佐さんと作家のダニエル・キイスさんとの交流にも、じわっと涙が出てしまいました。

 

再読とは思えないほど新鮮で複雑な気持ち、感動をもたらした「アルジャーノンに花束を」。

まだ読んでいない方は読んでみて欲しい本です。

温かい心と目を持つ人間でありたい、と思わずにはいられません。

チャーリーが本当に欲しかったものは、きっとみんながすでに持っているはずです。

そう教えてくれました。

 

今はどちらかというと孤独を推奨されている時代で、それも確かに悪くはないと思います。

私自身もそう生きる方が楽な場合もあるけれど。

人と関わることを求めたチャーリーの輝きと感動で胸がいっぱいになった今は、どうもそんな気持ちになれません。

人と関わること、学ぶこと。

普通の平凡な日常の中にある光を、今なら見つけられるような気がします。

それだけでも十分再読の価値がありました。

 

息子と本の感想を言い合い、考えや心の温度を知ることができたことも大きな収穫でした。

読書は楽しいな。

 

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