小説「絵のない絵本」

「絵のない絵本」 著者:アンデルセン

<あらすじ>

ある晩、若く貧しい孤独な画家が窓の外を眺めていると、故郷で見たときと変わらない、懐かしいまるい月がありました。

嬉しくなった画家は月に投げキッスを送ります。

すると月は画家に話しかけてきました。わたしの話すことを絵にかくようにと。

そして毎晩ちょっとだけ訪れる約束をしてくれました。

月はわずかな時間しかいられませんし、天気によっては現れないこともあります。それでも画家は心待ちにしていました。

月は世界中で見てきた出来事を話してくれます。

インド、フランス、スウェーデン、グリーンランド、イタリア、ドイツ、アフリカ、中国など、さまざまな国で見てきた、さまざまな出来事を聞かせてくれます。

わくわくするような話、可愛い話、美しい話、悲しい話、切ない話。

三十三夜にわたり月が画家に語った物語とは。

 

<感想>

生涯にわたりたくさんの国を旅したアンデルセン。アンデルセンというと童話のイメージがありますが、この「絵のない絵本」では体験に基づく話や、空想の話が月の言葉を借りて詩のように語られています。

世界中のさまざまな人の「人生のある一幕」が、月の優しい温かい目線で描かれていて、しかもそこには哀愁やユーモアもあり、三十三夜すべてがとても魅力的でした。

一話一話はとても短いですが、行ったことがない国でも情景が目に浮かび、タイムスリップとどこでもドアを一気に使った気分になれます。

世界中の街が出てきますが、観光本ではないので有名な観光地はほとんど出てきません。風景の描写はありますが、あくまでクローズアップされているのは「ある人のある場面」です。

誰もが素通りしてしまいそうな、生活の中のにある何気ない小さな一コマ。

その誰かの一コマを、暮らしの中に自然に湧き出た物語を愛おしく感じる本でした。

 

<こんな人におすすめ>

  • 子供の頃、アンデルセンの童話が好きだった人
  • 空想が好きな人
  • 世界旅行の気分を味わいたい人
  • 色んな人生を知りたい人
  • 詩や哀愁が好きな人

 

 

絵のない絵本 (角川文庫) [ アンデルセン ]

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