小説「龍神の子どもたち」著者:乾ルカ あらすじ・感想

「龍神の子どもたち」 著者:乾ルカ

最近よく「親ガチャ」という言葉を耳にするようになりました。

子どもたちが育つ環境は、親が築き上げた生活の中で生まれ、親の判断は日常を一変させる力を持っています。

環境の違いを受け入れざるを得ない子供たちが、反発しながらも互いを思いやる心や生きる力を育てる物語。

 

著者の乾ルカさんは、1970年、北海道生まれ。

2006年に「夏光」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。

直木賞候補や大藪春彦賞候補にもなっている作家さんです。

<あらすじ>

長谷部幸男は、集落で代々続く「白鷹御奉射(しろたかおびしゃ)祭り」を取り仕切る家の次男。

幸男は自分たちが住む集落の子どもたちと、都市開発が進んだニュータウンの子どもたち、両方が通う中学へ進学した。

だが、その中学の子どもたちは集落派とニュータウン派に分かれ、お互いの存在を疎ましく思っていた。

衝突しながらも、校長の計らいで近づいていく子どもたち。

そんな中、夏休みの林間学校に参加した幸男を含む9人は、コテージで突然の土砂災害に見舞われる。

頼りになる大人たちがいなくなった今、9人は生き残るために互いに知恵を絞り出しながら、山を登り始めた。

コテージがあった「黒蛇山」から、集落がある「白鷹山」のふもとまで、それぞれの山神様にまつわる神話や昔話を参考に、子どもたちは自分の頭で考えた最善の道を探る。

その道中で見えてきたお互いの気持ちとは。

子どもたちを待つ親たちの対応は…

 

<感想>

まったく違う環境に育った者同士が心を通わせるためには、相手を理解し、尊重することが近道かもしれません。

そんなことは理屈上、経験上、分かっているけれど、人はなかなかその近道を選べない。

特に大人ほどそういう傾向があるのではないでしょうか。

違う環境の人と出会ったとき、それまでの人生を否定されたように感じて自分に自信を無くすこともあると思います。

 

この本は、極限状態で友情を育むだけの物語では終わらない、現実の悲しさも描かれています。

子どもが読めば、サバイバルやキャンプに役立つ情報や、普段の生活の中にある知恵、友情の魅力に気づくかもしれません。

大人が読めば、凝り固まった自分の正義について、他人を思いやる想像力の欠如について、思いをはせるかもしれません。

そんな、自分の襟を正したくなる本でした。

 

<こんな人におすすめ>

  • 昭和に子供時代を過ごした人
  • 友情の物語が好きな人
  • 思いやりを取り戻したい人
  • 生きる力をつけたい人

 

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龍神の子どもたち [ 乾ルカ ]

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