「書楼弔堂 破曉」あらすじ、感想
京極夏彦の「書楼弔堂 破曉」
迷える人々に、その人にとっての究極の一冊を見つけてくれる書舗(ほんや)、書楼弔堂(しょろうとむらいどう)。
書楼弔堂の主人に救いを求め、今日も誰かが訪れる。
あらすじ
明治二十年代半ば。東京の外れ。
妻や子と離れて暮らし、職も失い、無為な日々を送る高遠は異様な書舗と巡り合う。
三階建の、大きい燈台のような風貌の書舗。名は「書楼弔堂」。
明かりは天窓と和蝋燭の灯りのみ。
弔堂には主人の手によって、古今東西の書物が集められていた。
訪れる人々は主人に悩み迷いを打ち明ける。
そして選ばれた、その人にとっての究極の一冊に巡り合う。
本とは何か。なぜ人は本を読むのか。
答えはこの中に。
感想
不思議な書楼弔堂には歴史上の有名人たちが訪れます。
浮世絵師の月岡芳年や書生時代の泉鏡花、ジョン万次郎、勝海舟など。
読んでいると自分がその時代にタイムスリップしたような気分になり、楽しかったです。
章ごとに現れる歴史上の人物たち。
ジョン万次郎も勝海舟も、生き生きとした姿で目の前にいる様でした。
次の章は誰かな、とワクワクしながら読みました。
京極さんの本は分厚いけれど、どれもあっという間に読み終わります。
なぜか。
まずはあたり前の理由ですが、面白いから。
芯が通っている。伝えたいことがあってそれが一貫している。ブレない。
ここまでは他の作家さんにもいえることかもしれません。
京極さんの本ならではの特徴は、なんといっても読みやすいことだと思います。
1ページごとに、すべてのページが句点(。)で終わっているのです。
初めて読んだときはその読みやすさに驚きました。画期的。
ページをめくるときも、読むのを中断してしおりを挟むときも、ノンストレスです。
続きが読みやすい。
話がそれましたが、この本を読んだことで得た最大の収穫は「本を読む理由が分かったこと」でした。
本の持つ役割や存在意義なども逐一納得です。
訪れる客の悩み迷いに対する弔堂の主人の答えが明確で、頭の中の霧がサッと晴れていく爽快感がありました。
こう考えたからこうした、けれどそれが正しかったか分からない、故に生き方に迷っている。
そこに至った理由を辿って、本人にも分からなかった原因を突き止め、ひも解いてしまう弔堂の主人。
洞察力があり、時代の移り変わりを理解し、強さと優しさ、賢さを備えた寛容な主人。
「こんな本屋、あったらいいなあ。こんな主人に出会いたいなあ」と思わずにはいられません。
私の究極の一冊も選んで欲しい。
だけどそれは難しいから、自分で読み続けて探そうと思います。
その一冊に出会うまで。
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