「知りすぎた女」あらすじ、感想

フリーマントルの「知りすぎた女」

イギリス人作家、ブライアン・フリーマントルのサスペンス小説「知りすぎた女」。

世界中の金融拠点にオフィスを構える大手会計事務所とマフィアのマネーロンダリング。それに伴う殺人事件。

悪と正義の狭間で翻弄されながらも戦う男と女のサスペンス。

 

あらすじ

舞台はアメリカ。

ニューヨークのウォール街で義理父が経営する国際会計事務所の重役に就くカーヴァーは、長年にわたる義理父とマフィアとの癒着に気づいてしまう。

図らずもマフィアの世界に足を踏み入れてしまった義理父だったが、カーヴァーに諭されマフィアとの関係に終止符を打つため動いた矢先、謎の死を遂げる。

義理父の死は事故か他殺か。

事件を追っている最中にも関係者がまた一人謎の死を遂げ、自らの身にも危険が迫ることを知るカーヴァー。

緻密で大規模なマネーロンダリングをハッキングによって知った、経済記者であるカーヴァーの愛人アリス。

何も知らず危険が迫る妻のジェーン。

警察やFBIが動く中、3人の交錯する思いは。事件の終着点は。

 

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感想

世界中の様々な犯罪で回収した金を洗浄し、表向きにクリーンな金にする緻密な仕組み。

効率よく莫大な利益を得るマフィアはなんとしても今の仕組みを守りたい。

そのためには殺人すら厭わない。

こんなスケールの大きい内容に、さらに男女の愛憎劇まで組み込まれていて、とても読み応えのある1冊でした。

 

メインは会計事務所とマフィアのマネーロンダリング、マフィアと善人の戦いですが、後半になるにつれ愛憎劇の方もヒートアップしていきます。

何せ原書のタイトルは「Two Women」。

出だしの主人公はカーヴァーですが、最後まで通しの主人公は愛人アリスと妻ジェーンだろうと思います。

アリスについては愛人というところに嫌悪感がありますが、賢く冷静で、マフィアの恐怖に屈せず犯罪を世に暴こうとする強さがあり、なかなか魅力的に描かれています。

生き残るための行動ができるタフな女性。

一方、妻ジェーンは何も知らない世間知らずのお嬢様という感じで、心身ともに弱め。夫や医者など誰かが常に近くで支えていないとダメな弱い女性、という感じでした。最初の方は。

夫を深く愛する上品な良妻。途中までは。

最後に驚きの展開が待っています。

マネーロンダリングより面白くなってくる二人の女性の攻防。一喜一憂しながら読みました。

追手から逃げるために助け合い、本音を語り、嘘を語り、慰め、騙し騙され…最後に奪うものとは。

断ち切れない負の連鎖について思いをはせるラストでした。

 

スケールの大きなサスペンスが好きな人はもちろんですが、ドロドロ愛憎劇(昼ドラみたいな)が好きな人も楽しめる小説だと思います。

テスカトリポカほどの強烈残虐シーンはありません。マイルドマフィア(これで?)です。

クライムノベルというよりはサスペンスという感じ。

色んな意味でサスペンスです。

続きが気になってつい読んじゃうタイプの小説。

面白かったです!

 

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