小説「ジェノサイド」あらすじ・感想
ミステリー、SF、アクション小説
高野和明さんの「ジェノサイド(上下巻)」。
山田風太郎賞、日本推理作家協会賞受賞作。
人類が進化の過程で行ったジェノサイド(大量殺戮)。現人類の戦争(大戦、内戦)でのジェノサイド。
特定のグループを破壊するためのジェノサイド。
目を背けている暇がないほどスピードを保ったまま進むストーリー。
ミステリー、SF、アクションなど、最後まで姿を変え続ける衝撃のエンターテイメント小説。
<あらすじ>
物語の舞台はコンゴ、東京、ワシントン。
アメリカ人で特殊部隊出身の傭兵イエーガーは、難病の息子を救う資金を得るため、3人の仲間と共にアフリカでの危険で不可解な極秘任務に赴く。
東京では、突然死した父からのメッセージで、難病の治療薬開発を引き継いだ創薬化学専攻の大学院生、古賀研人が薬の精製に奮闘。
ワシントンでは大統領が発動させた機密作戦が動き出す。
ジェノサイドという、子供から年寄りまで男も女もすべての生きる人が残虐を極めた地獄絵図の中、イエーガーは人類のため、息子のために生き抜く戦いを始める。
イエーガーがアフリカで知った、アメリカの本当の目的とは。
古賀研人が開発中の、新薬の本当の目的とは。
<感想>
一言でいうと、超絶面白い。衝撃のストーリー。
読み終わった後に残るのは、アメリカのドラマ「24」を一気見したような爽快感。
タイトルが「ジェノサイド」なだけに、読むのを躊躇していた作品でしたが、高野和明さんの「13階段」を読んでとても面白かったので、この本も読んでみることにしました。
上下巻共に厚めの本ですが、ダラダラした箇所がなく、スピーディーに、そして思わぬ方向へ物語が展開していくので、最後までずっと面白い!
敵味方が分からないスリル。「ヌース」という謎の存在。音も匂いも感じそうなリアルなアクション。
続きが気になって、空いた時間はすぐ本を手に取る数日間でした。
戦争は、兵器ビジネスが儲かる限り、いくらでも理由を作って続いてしまう。
そして兵士たちは、すぐ手の届く距離にいる生々しい目の前の人(敵)は殺せないけれど、遠くから武器を使えば罪悪感が減り、可能にしてしまう。
空爆など、人との距離が離れれば離れるほど、一撃で大量に殺せる武器ほど罪悪感は薄くなるようです。
さらに遠いところにいて指示を出すだけ、生々しい戦場の匂いを嗅がないトップ(この本では大統領)は、人の命に意味を持たない怖さがありました。
ある種の「にぶさ」を持つ天才というか、そういう人物がトップになると、簡単に大量の人の命が素早く失われてしまう。そしてそのトップを選ぶのもまた人。
誰の中にも残虐性があり、善人面がある。自分にもあるのか、あるんだろうな、と自問自答しながら読みました。
コンゴで行われた大量殺戮の描写はかなり残酷。
死ぬまでの拷問方法、過程が、読み飛ばしたくなるほど強烈で、さらに読んだ後も頭に残ります。
古賀研人の新薬開発の過程は、かなり難しい専門知識が出てきますが、その内容あっての面白さだと思います。
他人のために命がけで黙々と戦う優しさ、仲間との絆、親子愛、そういうプラスの感情が戦争の残虐性を弱めてくれるわけではないけれど、少なからず救いになりました。
戦争の歴史、薬学、アメリカ政府etc…この作家さんがものすごく緻密な勉強をして書いた本だということが分かります。
1ページ書くのにどのくらい時間かかるんだろう!と、読みながら思いました。
本の最後に参考文献リストがありましたが、そのあまりの量の多さに驚きました。
しかも実際はそれより遥かに多い、200冊以上に目を通したそうです。
読んだ文献を自分の中に取り込んでアウトプットし、さらに独創的な物語に反映させる…すごい頭脳と忍耐力の持ち主ですね!!天才的。
本の中で様々な分野の天才が出てきますが、書いている人が天才じゃないと天才の思考は想像できないのだろうなあと、改めて作家、高野和明さんの凄さを感じました。
他の本も楽しみにしています。
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